日本財団 図書館


IMOのダブル・ハル規制の実施に伴い、解撤需要が増大するとの見通しを宮村氏は述べた。発展途上国で船舶が解撤される際に、大量の有害物質が適切に処理されていないことを指摘した。さらに詳しくは4.1、4.2両項参照

続いて宮村氏は舶用工業について述べた。外航船建造受注価格の低下傾向、事業コストの上昇、市場の制約などから、メーカーは研究開発投資をためらっている。次に日本の舶用工業製品の生産・輸出入実績(表II-1)を説明し、また図II-1:日本の舶用工業製品の生産額・輸出入額の推移についても触れた。同氏は、舶用工業の従業員数が1986年から99年にかけて減少を続けていることを指摘した。プレゼンテーションの最後の部分で、宮村氏は造船業に関連する国際協力のために、JICA、JBIC、OSCCが提供している技術・資金援助について、その一端を説明した。

 

質疑

ベトナム代表:日本における造船業の発展過程において、国内の中小型造船業を支援する政策が採用されているか。

日本では、中小型造船所は概して内航船や漁船の建造に従事しており、日本経済にとって、重要な役割を果たしている。設備の近代化や技術開発などの面で、中小型造船所を支援する各種の施策が講じられている。また操業の技術と効率面でもグレードアップを図ってきた。引き続き改善を促進するために技術・資金面での支援が行われる。政府はさらに、技能の向上にも積極的に寄与している。さらに詳しくは日本のカントリー・ペーパーのIII項を参照されたい。

マレイシア代表:日本における、特に造船業の労働力の高齢化について質問したい。以前の日本では終身雇用制度があって、それにより造船労働力が確保できた。しかし現在では、多数の造船所でそういう制度がなくなっていると聞いている。どういうインセンティブを与えて、労働者をつなぎとめているのか。第2に、日本では国内向け、輸出向けでは、船舶設計に関する規則が異なると聞いている。そうだとすると、中古船を売却して、それが国際水域で運航される場合にIMOの規則を満足する上で問題が生じないか。この点をご説明願いたい。

労働力の高齢化は、確かに日本では非常な深刻な問題になっている。日本では造船労働者の平均年齢が42〜43歳で、他産業に比べて約3歳高く、また若い世代は造船所に就職したがらない傾向がある。そのこと自体が日本の造船労働力の高齢化につながっている。しかし政府としてはまだ、この状況について戦略的措置を講じていない。造船業に関する限り、若い世代を業界に引きつけるように努力が続けられる。同時に、人手が必要とされる作業の量を減らす一方、各種の業務の自動化をさらに促進する戦略を開発する。

第2の質問については、日本から国内船を買って、それを外航船として使おうとすると何か問題が起きるのではないか、そういう印象をお持ちのようだが、確かに日本国内で使用されている一部の内航船では、貴国で使用される場合に何らかの手直しが必要になるかもしれない。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION