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したがって、とくに応力の高い個所(30kg/mm2附近)では低サイクル疲れを起こして割れが入るという以外にはあまり疲れについて心配する必要はない。これは部材の直交する箇所とか、肘板の付根とか、不連続な構造の場所であって、ここに割れが入るのは、就航後しばらくして激しい波にもまれた後などに起り、これが低サイクル疲れ(高応力疲れ)と考えられている。この割れ目は、前に述べたぜい性破壊のスタート点となることもあり、注意が必要である。

 

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第1.6図 疲れ曲線(SN曲線)

 

1.3.3 鋼材の腐食と衰耗

鋼材の大きな欠点は空気中および海水中、とくに海水のしぶきのかかるところで腐食しやすいことである。最近は鋼材の下地処理(サンドブラスト、ショットブラスト、プライマーコーティング)と塗料が格段に進歩したが、タンク内、二重底内、単底下部などは腐食を完全に防止することはできない。塗料を塗らない状態で、軟鋼板は海水中で10年間に1〜0.6mm位腐食すると考えてよい。この量は大きな応力がかかった状態とか、電流が流れている状態では非常に多くなる。

船体の衰耗量は船齢20〜25年の場合、最大2.5mmに達した例があり、平均の年間衰耗量として、船底外板0.1mm、船側外板、上甲板0.13mm程度と考えてよい。したがって、船齢の終点において所要の強さを必要とするから、新船のときは、腐食余裕として2〜2.6mmを追加しておく必要がある。但し、鋼船の構造規則にはこの値を含んだ寸法が示しているから、設計に当っては、別に腐食余裕を加えてやる必要はない。

 

 

 

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