設備に関していえば、罫書に電子写真の焼付の原理によるEPM系統の機械や、電子計算機の発達に伴なう数値制禦のガス切断機が一部実用化に入り、運搬手段にしても、クレーンを主体とする方法から、コンベアーを主体とするように変りつつあり、船殻各工程に比較して、現在、最も変革期にあるのが加工ステージである。従って、常に、最新のニュースを知るように心がけておくことは必要であるが、新しいものを急いで、取り入れることは、よく情勢を見極めてからにすべきである。
3.2 罫書という作業の性質
3.2.1 罫書作業における注意事項
具体的な注意点とその説明については、“小型鋼船建造要領”を参照してもらうとして、次の三つの事項が、罫書作業における本質である。
(1) 鋼材の歩留まりを上げる。
(2) 工事要領をはっきり決める。
(3) 精度を重視する。
鋼材は船体に使用する材料のうちで、価格の高いものであるから、同じ船を作っても、沢山の鋼材を使用する程、造船所の利益は低下するので、上手に板取りをすることである。
伸ばし要領、罫書面等、後々の工程で影響するものが決められる。
罫書いた線一本を頼りに、後続工程は船殻を組んで行くのだから、罫書いたとおりに船ができ上ると考えなくてはならない。船殻の誤作の大きな部分が、罫書作業にかいて発生する。それは、後続の工程で、小組材とか、ブロックになってはじめて、不具合が発見されるからである。即ち、罫書線だけでは、他にチェックのやりようがないということを示している。
3.2.2 建造要領の引出し
先に述べたように、罫書作業においては、後の工程の取合状況を考えて、伸ばし等を決めねばならないので、従来は、船台の取付工のように、現場の様子のよくわかっているものが罫書作業を行ったのであるが、今後は、他の手段で、罫書に対する指示事項を決めねばならない。普通、工事量が多いところでは、カッティング・プランという形式で、1枚の鋼材にどの部材とどの部材を取り合うか、またその個々の部材の伸ばしは、どのようにするかを指示するが、ここで肝心なことは、カッティング・プランを作るということではなくて、そのような指示内容が明確に決められているかどうかということである。
従って、管理、監督者は、加工を始める前に、この船は、どのような要領で、建造するかを明確にし、それを、罫書に対する指示事項として、整理しておかねばならない。