1.2.7 船殻工事の職種と仕事
一般に鋼船建造においては次の職種が必要である。
(1) 現図、罫書(マーキングともいう)
(2) ガス関係、ガス切断、板曲げ、撓鉄、歪取り、ガス溶接
(3) 鉄工関係 取付け、計測(ブロックの位置決め)
(4) 木工関係 盤木、進水関係、計測(位置出し)
(5) 電気関係 電気溶接、アーク・エアーガウジング
(6) 空気関係 ハツリ、グラインダー、孔明け、鋲打ち、水圧試験、ホーステスト
(7) 整備関係 足場作業、玉掛け、クレーンやウィンチ等の運転、動力源
(8) サービス関係 高圧電源及びガスの取扱い、工具の保全、消耗品等の管理
上記のごとく多種多様であるが、関係職種内で可能な限り多能工化することが望ましい。
1.2.8 工事量の把握
これから建造する船の工事量はどの位あるか、それぞれの職種に適した項目で、事前につかんでおく事が大切である。これは実行予算の見積りから始まって、日程計画や人員投入計画等、すべての計画の基礎となるので“管理量”とも呼ばれ、通常次の三項目がある。
(1) 鋼材重量:船全体の重量で、加工、組立、船台の各工程の管理量として使われるが、特に初期の船殻全体での検討時に使われる。
(2) 切断長:船殻部材の切断される長さで、マーキング、切断作業に使用される。
(3) 溶接長:船殻全体の溶接する長さでこれには溶接される実際の長さの他に、Bl(べーターエル)と云って、溶接姿勢や脚長の大小による溶接時間の違いを加味した長さがあり、いづれも、溶接職種の管理量として使用される。
1.2.9 計画工数
建造に先立って、船殻工事の予算をたてる必要がある。つまり“この工事をどの位の時間でやるか”をきめる事で、計画工数をきめると云う。
計画工数をきめるためには、仕事の量(工事量)と、その仕事をどの位の速さで消化するかという能率をつかんでおく必要がある。前者が1.2.8で述べた、鋼材重量、切断長、溶接長であり、後者はそれに対して、鋼材1トンあたり何時間かかるか(H/T)、1時間に何メートル溶接できるか(M/H)等の能率の事である。計画工数は仕事を管理するうえで大事な指標であるので、各ステージ単位ごとに出しておく事が必要である。すなわち、
(1) 船殻全体としての計画工数
(2) 各工程(加工、組立、船台)ごとの計画工数
(3) 各職種(現図、取付、船台溶接)ごとの計画工数等である。