a) 焼きなまし(焼鈍)Annealing
約850℃の高温に加熱し、所定時間保持して均一な組織(オーステナイト)にした後、極めて徐々に冷却する熱処理をいう。普通は炉冷される。鋼の軟化、延性の増加、内部応力の除去を目的とする。
b) 焼きならし(焼準)Normalzing
約900℃の高温で均一なオーステナイト組織とした後、静止空気中で放冷する処理をいう。結晶組織の改善、結晶粒の微細化を目的とする。
c) 焼入れ Quenching
約900℃の高温で均一な組織とした後、水、油、空気などで急冷する方法をいう。
水、油、空気などその各々によって焼入れの効果が異なり目的に応じて使い分けされる。
d) 焼きもどし Tempering
焼きもどしは、焼き入れ又は焼きなました鋼を723℃以下の温度に加熱し、所定時間保持した後、適当に冷却する処理である。
鋼の硬さの減少、内部応力の除去、延性及びじん性の増加を目的とする。
4.1.3 少量の含有元素の影響
a)硫黄(S) 硫黄は、通常0.05%以下に制限されている。硫黄の含有量が多いとサルファーバンドを作りサルファークラックの原因となる。
b)燐(P) 燐は、通常0.05%以下に制限されている。少量の燐は強さと固さを増すが、多量に含まれると強さは増すが、伸びとじん性が減少する。
c)ケイ素(シリコンSi) 0.2〜0.6%程度の含有率なら鋼の伸びをほとんど減ずることなく、弾力性と引張り強さを増す利点がある。シリコンは、溶鋼の製造中に含有酸素ガスを除去する脱酸作用があり、キルド鋼の製造に重要な役割をもっている。
d)マンガン(Mn) マンガンは、炭素鋼には重要な元素で、硫黄の害を除くほか、強さとじん性を増す作用がある。
4.1.4 溶接冶金
溶接は、製鋼に比べて急激な熱的変化があるため、その部分の断面マクロをとってみると図のような組織の変化を明確に認めることができる。
a) 溶着金属部は、一度溶融した金属が凝固した部分で、その大部分は溶加材が溶着したものである。溶接棒の引張り強さは43kg/mm2以上であるから、完全な溶接が施行されると溶着金属部は母材と同程度以上の強さを、理論上は持っている。