三脚グラビティーは、比較的広い作業環境の良いところに適している。溶接棒の長さの1.3〜1.8倍の溶接長が得られ、しかも、1人で3〜4台使用可能なので能率が良い。
低角度式は、二重底ブロックの中など比較的狭隘なところで使用される。運棒比は1:1であるが、1人で3〜4台使用可能なので手溶接に比べると生産性は高い。
現在のところ、脚長5mm以上の隅肉溶接に使用することができる。
なお、グラビティー溶接にはD4327鉄粉酸化鉄系の溶接棒が専用に使用されている。
例題9) グラビティー溶接の適用範囲拡大の一例をあげよ。
答)図のように、タック溶接個所にもグラビティー溶接が適用できるよう、ロングタック溶接に変更することがある。
b) 下進溶接法
立向き溶接は従来、上進で溶接するのが常識であったが、最近では下進溶接が取入れられ始めている。D4316の低水素系の溶接棒が使用され、上進に比べて太い棒が使用でき、高い電流が使えるため能率は向上する。
ただし、溶接棒の乾燥に十分注意し、開先面も清浄でないとブローホール、溶込み不良などを出すし、また一般手溶接に比べて、高い取付け精度および溶接技量が必要である。
これは隅肉溶接に多く使われるが、ギャップが大きいと溶接不可能となり、また取り付け精度が良くても、のど厚が不足になりがちである。水密性を要する部分や重要部材を下進で溶接する場合には、検査官の承認を一般に必要とする。
2.2.2 サブマージアーク溶接
造船における自動溶接のナンバーワンは、このサブマージアーク溶接である。(指導書参照)手溶接に比べて5〜6倍の高電流を使用するため、非常に能率が良い。最近、大手の造船所では板が厚いため電極数を増して2電極、3電極の溶接機を使うところが増加してきた。また、この溶接法では深い溶込みが得られるので、開先の裏にバッキング材を当て、表と裏の溶接を一挙にやってしまう片面溶接法を採用している造船所が多い。
現在一般的に使用されている片面溶接法を第2表に示す。なお、この片面溶接には、かなり高い設備費、高い開先精度及び高い溶接技量を必要とする。