b) 最高硬さ(ヴィッカース荷重 10?s)が350以下の場合には、熱影響部割れが生じることはほとんどない。
c) 最高硬さ250以下の場合には熱影響部の延性は良好である。
d) サルファーバンドなど硫黄の偏析のある鋼材は好ましくない。
2] 使用性能上の溶接性
溶接用鋼材としては、工作上の溶接性が良好というだけでは不十分である。航海中、溶接構造では構造上の不連続部などから割れを発生しやすく、また、一度割れが発生すると全体が一体となっているため、その割れがどこまでも進展して大きな破壊を起こすおそれがある。したがって溶接構造用材料としては、こういった割れの発生と伝播を起こし難いような材料を選定する必要がある。
例題1) 炭素当量とはなにか。
答)鋼の中には炭素(C)の外にMn、Si、Cr、Mo、V、など種々の元素が入っている。溶接性に最も大きな影響を及ぼす元素はCであるが、Mn、Si…なども影響を及ぼす。鋼のだいたいの性質を知るため、Mn、Si…などをCに換算して、これらを加え合わせたものを炭素当量(Ceq)という。
簡単のため通常は次式で計算する場合が多い。
例題2) ビッカース硬さ試験法とはなにか。
答)ダイヤモンド四角鋲(頂角136°)のとがったところを計測しようとする物体に当て(荷重は通常10kg)試験片についた凹の表面積を測定して、これを硬さに換算する方法をいう。例えばビッカース硬度250ならば、Hv250と表わされる。
例題3) 脆性破壊とはなにか。
答)SS41についていえば、通常の場合は引張り強さが41kg/mm2以上あるはずであるが、これが材料の表面などに欠陥等があり、寒冷地等においては、41?s/mm2以下のごく小さな力で一瞬のうちに破壊することがある。これを脆性破壊という。
脆性破壊が起こるためには、
イ) 軟鋼や低合金鋼のように、体心立方格子であること。
ロ) 切欠きがあること。
ハ) 低温(室温から0℃付近)
が必要であることがわかっている。
例題4) 遷移温度とはなにか。
答)破断に要する吸収エネルギーの量が急激に低下する温度をいう。
吸収エネルギーが小さいということは、小さな力でも簡単に破断することをいうのであって、通常吸収エネルギーの測定には、シャルピー試験機が使用される
例えば、水温が7℃の海上では大丈夫であるが、氷の浮いている0℃の海では41kg/mm2以下の小さな力で簡単に破壊することがある。