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第11章 電気防食法

 

11.1 鋼材の腐食の原因

水中の鋼材の腐食は、鋼材表面に生ずる電位差に基づく一種の局部的電池作用が原因である。電位差は、鋼材表面の温度、塗膜の厚さ、付着物等の違い、水(電解質)の濃度、組成、温度、流速等の違いの中で、鋼材と水が接触して、その境界部に生じるとされている。

電位差の低い部分(陽極部)から、高い部分(陰極部)へ電流が流れる。この電流を腐食電流と呼び、流出する陽極部に錆が発生して、腐食が生じる。

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化学反応式

陽極部 Fe→Fe+++2e-

Fe+++20H-→Fe(OH)2

Fe(OH)2+O2→Fe(OH)3

鉄(Fe)が放電(e-)して、鉄イオン(Fe++)となって溶け出し、水中の水酸イオン(OH-)や酸素(O2)と化合して、水酸化第一鉄(Fe(OH)2)や水酸化第二鉄(Fe(OH)3)となり、これが腐食の原因となる錆である。

陰極部 2H++2e-→2H

2H+1/2O2→H2O または 2H→H2

電流(e-)が水素イオン(H+)と化合して水素(H)になり、更に、水中の酸素と化合して水や水素の気泡になる。

 

11.2 電気防食法

一般には、低電位差であり、塗装の膜により電気的絶縁にして、電位差の発生を防止しているが、異種の金属が接続されている部分や流速の差が激しい場合には、かなりの電位差を生じる。例えば、

陽極部 船尾外板や舵板 陰極部 プロペラ

陽極部 海水吸入孔 陰極部 パイプ等

その他、ビルジキールや船底外板等である。

 

 

 

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