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II.I.II 風洞モデルによる高性能で安全なセール形状の研究開発

 

1. 実験の目的

セーリングヨットのセール性能を実験的に明らかにする研究は過去何度か行われ、我が国だけでも大阪大学での風洞実験、金沢工業大学における実艇実験など、いくつかの報告がなされている。そのため現在では、典型的なセーリングヨットのセール流体力については、おおよその精度で推定を行うことができる。しかしながら、これらは性能向上や開発を目的として行われたものではなく、試供される限られたセール、リグについての実験であったため、セール寸法(セールプラン)やセール形状の改良の目的のために使用できる系統的なデータは、非常に少ないものであった。唯一、平成7年度になされた(財)シップ・アンド・オーシャン財団の「小型高速艇に関わる性能向上の調査」があるが、これもアメリカズカップ艇という設計条件に制限のある特殊な大型レーシングヨットに関する研究開発であった。

本研究は、題記「身障者ヨット」のリグとセールの設計のために、有益な情報を得ることを目的としている。具体的には、安全性と高性能の両立するセールプランや形状を探ることである。

まず安全のためには、

1) セールを小さな力で扱えること

2) クローズホールドにおいてヨットの傾き(ヒール)角が過大になりすぎないことの2つが基本的条件として考えられる。これらは原則的にセール面積減少、省力化の方向を示している。そして、セール面積の減少にもかかわらず、性能を確保できるセールプラン、形状を検討することがテーマとなる。具体的には、候補となるいくつかのセールプラン、セール形状について、基本的なセール特性と、わずかなセールの調節(トリム)によってその特性がどう変化するかを風洞実験により求め、それらの相対的な差異を明らかにしようとしている。

セーリングヨットにおいては、風が強くなるとヒール角が過大になり過ぎないように、「風を逃がす」という操作を行うが、このような状態では、セールプランの良否はあまり関係がなくなる。本研究では、実艇が最も快適にフルパワーで走ることのできる、10から14ノット程度の風域を想定している。

最後に、一般的なヨットに適応できるような性能に関する研究成果は、International Measurement System(以下IMSという) に用いられる Velocity Prediction Program(速度予測プログラム:セーリング・シミュレーションのひとつで、以下VPPという)に反映され、世界的に普及している。本研究においてもIMS VPPを参考としているが、それと比較対照できる研究としては、本邦初と思われることを付け加えておく。

 

2. 実験の概要

2.1. 実験の日時

2000年7月31日から8月9日まで、実質8日間

 

 

 

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