日本財団 図書館


8. おわりに

今回の「セールトリム装置の障害者対応設計」業務においては、身体障害者の筋力測定を実施し、その測定結果からセールトリム装置の最適化を行ったものである。

当該業務の1つの目的は、障害者の筋力を数値的に把握することであったが、その過程の筋力測定を実施したことによって改めて認識することができたものとして、障害者がヨットを操船するに当たっては、まず、ある程度の筋力が必要であることはもちろんであるが、筋力不足に関してはウィンチ及びテークルの活用等によりある程度は対処し得ること、次に、個人の持てる筋力を十分に発揮させるためには、それぞれの障害を有する個人に応じた体勢(姿勢)を保持することや足で踏ん張ること(可能な場合)が重要であるということである。後者の、個人に応じた体勢の保持及び足の踏ん張りの重要性、つまり、ウィンチ等のセールトリム装置と操船者の身体との位置関係や力を発揮し得る体勢のサポートについては、数値データとしては現れてこない事象ではあるがより重要なことであり、今後の障害者ヨットの開発、特に障害者が座す椅子の開発に当たっての貴重な指針となるものと確信する。

また、筋力測定を実施して得られた測定データに基づいてウィンチの大きさを決定していった過程は、まさしくヨットの操船者である人間側の視点に立った開発のアプローチであり、特に操船者として身体に障害を有している者を予定している今回のプロジェクトにあっては極めて有意義であったと言えよう。

一方、今回の筋力測定は、より多くのより一般的な障害者の筋力測定データの収集を目的とし、船上を模した筋力測定装置により実施したため、実際の船上での気象及び海象下で得られるデータとは相違があることを否定し得ない。したがって、今回得られた知見をより有効なものとならしめるためにも、また、新たなる知見を得るためにも、実艇上での筋力測定及び各セールトリムポジションにおけるコントロールロープの張力の検力を行うことが望まれる。

最後に今回の筋力測定の全データを添付資料1、2、3に示す。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION