E. 健常者の筋力測定結果から導かれるウィンチサイズ
健常者の1stの筋力測定値:202.7
パワー比1当たりの筋力:202.7 / 10.3 = 19.7(Kg・f)
ウィンチサイズ:200(Kg・f) / 19.7(Kg・f) = 10.2(:1)
Lewmar社の提供する資料に基づくデータでは、一般的なセーラーの操船する一般的な8mクラス(セール面積:28m2)のジブシート用のウィンチサイズのPRが16(:1)であることから、建造中の障害者ヨット(セール面積:14.5m2)のジブシート用のウィンチサイズのPRは、8(:1)である。
これより、健常者の筋力測定結果から導かれるウィンチサイズは妥当な範囲内と考えられる。
F. 建造中の障害者ヨットのジブシート用のウィンチサイズ
健常者と障害者の1stの筋力測定値の比は、202.7:116.7であることから、障害者ヨットのジブシート用のウィンチサイズは1stで
10.2 * (202.7 / 116.7) = 17.7(:1)
また、2ndで
17.7 * 1.9 = 33.6(:1) (ギヤ比からではなく、筋力比から求めた。)
となる。
以上のことから、障害者ヨットのジブシート用のウィンチサイズは、Lewmar社の30ST(PR1 13.8:1、PR2 29.2:1)または40ST(PR1 13.2:1、PR2 40.2:1)が妥当と思われるが、表・6-1の筋力測定結果から被験者は女性が多いこと及び50〜60歳代の人が多いことより、測定値はやや低めの傾向が出ているものと推測される。したがって、ウィンチサイズは、Lewmar社の30ST(PR1 13.8:1、PR2 29.2:1)とする。また、当該ウィンチはセルフテーリング(自動巻き)であり、障害者が容易かつ安全に取り扱うことが可能であると考える。
7-2. その他のセールトリム装置の最適化
ウィンチ以外のセールトリム装置の最適化を行うためには、セールトリム装置の各々についてそこにかかる力の大きさを把握し、ウィンチサイズの決定の場合と同様に、今回の筋力測定から得られた障害者の有する力との関係を検討することが必要となる。
セールトリム装置として検討が必要となるのは、メインシート、カニンガム、バング、アウトホール及びリーフの各システムである。
メインシートについては、メインシートシステムをブームエンドからどれほどの距離に取り得るか及びテークルの数の検討を行う。
カニンガム、バング、アウトホール及びリーフの各システムについては、コントロールロープのリードのし方及びテークルの数の検討を行うこととなる。
セールトリム装置の各々にかかる力の大きさについては、セールの風洞実験からは十分なデータとして得られなかったこと及び実艇を用いて実際に検力を行うことがより有効であること等により、実艇が完成した暁に各々の力を実艇上で検力して検討することが必要となる。またその際には、ロープ類の取り回しの確認を行い、操作性、安全性等に支障がないかを確認するものとする。