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社会参加システム推進グループ

 

21世紀は働く人もボランティア!

国が「勤労者マルチライフ支援事業」推進へ

 

「その目的―退職者を含む勤労者のNPO活動、ボランティア活動への参加を推進すること、その背景―勤労者が、仕事を離れて、ボランティア活動など自らの関心のある分野の社会活動に参加することは、在職中の勤労者の視野を広げ、退職後の生きがい対策にもつながるほか、地域社会における人と人とのネットワークの形成を通じた新たなアイデンティティーの形成にも資する―」

皆様、これは誰が書いた文章だと思われますか。そうです、労働省(現厚生労働省)のお役人です。同省は以前より、勤労者のボランティア活動の推進について積極的な事業推進を図ってきましたが、2000年度より日経連や各地の経営者協会の協力も得て、従来以上の実践的取り組みを行おうとしています。これが、標記の「勤労者マルチライフ支援事業」です。

さわやか福祉財団は1200万人のボランティア参加、勤労者5人に1人のボランティア参加のシステムづくりを進めてきましたが、この厚生労働省・日経連の動きに歩調を合わせて、堀田理事長が本事業推進会議の座長、社会参加システム推進グループの蒲田が運営部会のメンバーとして本事業に参画しています。では具体的に何をするのか、以上の説明だけではわかりにくいので以下、Q&A方式で事業の概要を説明させていただきます。 (蒲田尚史)

 

Q1 具体的にはどんなことをやるのですか?

A1 財団流にいえば、当財団が提唱する「社会貢献マーケット」支援する方と支援を求める方とが同じところに集まって、活動内容や支援の仕方などの情報を一斉に交換するマーケット(情報誌『さぁ、言おう』97年5月号5ページ記載)1を全国に広める事業です。

 

Q2 地域的にはどこから始めるのですか?

A2 取りあえず、モデルとして茨城県、群馬県、東京都、神奈川県、愛知県、大阪府(関西、東大阪)、岡山県、広島県の9経営者協会の関係企業に働きかけます。

 

Q3 行政がトップダウンでやって成功するのですか?

A3 過去の経験から、そのような懸念も頷けますが、厚生労働省が事業の運営ポイントの中で「行政からの押し付けとならないようにする」と言っているのでこれを信用しましょう。さわやか福祉財団も発言していきます。

 

Q4 90年代に入って経団連が本格的に取り組み始めた「企業の社会貢献活動」の推進と、どこが違うのですか?

A4 経団連はどちらかというと大企業中心で「良き企業市民としての企業」といった観点からの取り組み、本事業は大企業はもとより、地域の中小企業まで含めた、かつそこで働く勤労者(含む退職者)に焦点を当てた取り組みです。

 

Q5 企業にとってどんなメリットがあるのですか?本事業に取り組むことは事態の流れからいっても自然であり、企業の責任であるといっても、特に中小企業には「そんな余裕はない」と一蹴されませんか?

A5 一蹴される可能性は極めて大きく、また「そもそもNPOって何なの?」といった質問が出てくるのが普通だと思われ、事業を進める上で困難が待ち受けているのは覚悟しています。日本の企業およびそこで働く勤労者の意識やカルチャーを変えていく壮大な実験ともいえる大事業といえましょう。

 

Q6 企業の中には「ボランティアは個人が自発的にやるもので、企業がお節介する必要はない」といった意見もありますが?

A6 個人の自発性を引き出すのに企業が協力するのは好ましいことです。従来より、一歩踏み込んだ取り組みが必要と思われます。

 

Q7 一歩踏み込んだ取り組みとは具体的には何を意味しますか?

A7 企業についていえば本事業に取り組むことのメリットを理解していただくことです。企業経営者に「社会構造の転換期にあり、変化が激しく、競争の厳しい日本の経済社会を企業が生き抜いていくには人材が鍵、個性豊かで人好き、社会好きな頭の柔かい頑張り人間が必要、このような人材は今までのような企業内研修だけでは育たない。企業の外にも目を向け、たとえば、多様な価値観、専門性をべースに自主的に社会公益実現に取り組む非営利組織との関わりを持つ中で人材を育てることも一法、またそのことが企業カルチャーの幅を広げ、ひいては新規の事業展開につながる可能性もある」といった説得を試みることです。

 

Q8 わかりました。ずばり、本事業の成否の鍵は何ですか?

A8 上記の「社会貢献マーケット」でいかに有能なコーディネーターを確保できるか、この点だと思われます。

 

 

 

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