単独でケアマネの五五%を握る
「複合体」の利用者は「包括的サービスが継続的に受けられるため、利便性・安心感が増す」が、実はマイナス面もある。地域の保健・医療・福祉の供給を特定のグループが一手に握ってしまうため利用者は多くの事業者の中から自分の好みに合った事業者を選ぶことがむずかしくなるからだ。
ケアプランを作る指定居宅介護支援事業所は鴨川市には九事業所あり、そのうち二つが亀田総合病院のもので、両事業所が抱えるケアマネジャーは合わせて一八人。市内のケアマネジャー三一人の五五%を占め、見方を変えればケアプラン作成の“独占化”が進んでいる格好だ。それだけにサービスの質を客観的にチェックするための第三者評価機関が欲しいところだが、鴨川市にはまだない。
「鴨川市高齢者保健福祉計画」は市民、行政、事業者の「協働」による地域ケア体制の整備を謳っている。確かに民活こそ事業効率を向上するための手段である。だが、大都市を除くほとんどの市町村では営利、非営利を問わず特定の事業者が介護保険サービス供給のリーダーシップを握るなど地域独占は進んでいる。「複合体」の存在は両刃の剣といえる。運営主体の“良心”に頼ることになり、「それだけに保険料を集めて事業者に支払う権限を握る市町村の責任は重い」とは三鷹市で保険課長を務めたことのある高橋信幸長崎純心大学教授の指摘だ。自治体が保険者としての責任をしっかり果たさなければ被保険者の「選択の自由」は保障できない。介護保険を住民主体のシステムに育てていくのもまた行政の責任である。