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地域の保健・医療・福祉を実質的に一つの事業体が抱え込んでしまったとしたら「医療」による「介護」独占につながりはしないか? いわゆる「保健・医療・福祉複合体」は効率的に介護を供給する半面、供給独占のリスクをはらむ。多くの市町村が抱える課題を千葉県鴨川市に探ってみた。

(取材・文/尾崎雄)

 

“天国までの百マイル”

 

作家・浅田次郎の小説『天国までの百マイル』は昨年秋、映画化されたからご存知の方もあろう。小説では、外房・鴨浦のサンマルコ病院に“ゴッドハンド”を持つ心臓外科医がいて、どんな心臓病でも治してくれる。「鴨浦のサンマルコ病院」とは実は「鴨川の亀田総合病院」がモデル。「天国までの百マイル」とは東京から鴨川までの距離を指す。

東京から一〇〇マイルすなわち約一六〇km、クルマを走らせると、真冬でもサーファーが群がる千葉県鴨川市に着く。土地っ子が「サーフィン・ファンのキムタクも通う」と自慢する渚から歩いて間もない海岸には、イルカのショーで有名な鴨川シーワールド。その隣にあるのが亀田総合病院(亀田信介院長、ベッド数七五〇床)だ。

月曜日の一〇時前、同病院の在宅医療部を訪ねると、小野沢滋副部長以下一〇人のケアマネジャー、看護婦ら在宅介護スタッフがそれぞれノートパソコンを開いてケアカンファレンスの真っ最中。検討ケースとなる高齢者のデータはすべて電子カルテに載っており、簡単な操作で画面に呼び出すことができる。全員が該当ケースの医療・介護関連情報をその場でシェア(共有)しながらケアプランの検討やサービス機関との連絡調整などを効率的に行うことができるのだ。

 

「かかりつけケアマネも…」

 

亀田信介院長は、特別養護老人ホーム「めぐみの里」を持つ社会福祉法人、太陽会の理事長を兼務している。訪問看護、デイケアなど医療的な在宅サービスは病院から、施設入居やショートステイは特養からと、亀田グループの病院と施設が一人の利用者に対して総合的かつ効率的に提供する体制ができている。亀田病院に入院した高齢者に対しては病院所属のケアマネジャーがケアプランを作成。

 

 

 

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