私は幾度となく「男手が欲しい」と思いました。家の前の坂道を車イスで押して花見をさせたかった、二階の自分の居室に上がりたいと最後まで言っていた母を、せめて一度くらい上がらせたかった。気軽に頼める男性がいれば、とため息が出たものです。
介護保険の改善に向けて女性たちが要望を提出
今年九月「高齢社会をよくする女性の会」は長野市での一九回目の全国大会の開催後、大会での討議を踏まえて提言をまとめましたね。「独居老人」のお一人として、どう思われましたか?
私はこの大会に助言者として参加してみて、やはり地域によってずいぶん違うと、格差を実感しました。それはさておき提言は全部で八つです。
「細部は自治体と現場に任せるべき。制度はシンプルに利用しやすくすること。家事は生活自立の基本だから、家事援助を継続して在宅支援を進めること。利用者の側も学習し、仕組みや意義を理解した上で利用できるような努力を。要介護の高齢者の思いを大切にして適切なサービスが受けられるようにすること。全国各地で活動するNPO・民間互助グループへの支援を拡大してもらいたい。グループホームを増設して介護の町づくりを進めてほしい。ヘルパーの待遇確立」―こういった要望を厚生大臣宛に提出しました。
この中の家事援助については今、日常的に私が感じていることです。一人暮らしは何て雑用が多いのか、ほんのちょっとしたこと、たとえば表の通りまでごみを出すこと、庭の水やり、道路の掃除など、時としておっくうです。家事は生活自立の基本として評価してほしいですね。ところが介護はおろか家事もしたことがない男性は多く、こういったことが理解できないのです。
一方で、身体介護、家事援助、複合という訪問介護の形が、混乱を招いたり、ヘルパーの収入減の原因になっていたりします。訪問介護の内容をきちんと見直し、利用しやすいものにすること。そして、それぞれの市町村の実状に即して運用していただきたい。
私自身は当分一人暮らしができるだろうと、この家をバリアフリーに建て直そうかとか、有料ホームはどうかとか、考えているところです。
介護保険に関して問題は山積しており、これからも次々と噴出してくるでしょうが、情報公開、市民参画、実態チェックを三本柱に、一つずつ解決を図っていきたい。そして、実体験のある人が、この見直しに当たってほしいものです。だから、一人でも多くの男性が、介護の現場に参画することを願っています。