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するとその係の人は、最低ランクでも30万円はかかるだろうと言った。おそらく係の人としては葬式の費用を説明したのだと思います。ところが老人は30万円用意すれば役所でそれなりの葬式を出してくれた上、遺骨を四国の先祖代々の墓に持って行って埋葬してくれるものと受け取ってしまったらしい。そこで苦心して30万円作り、役所に持って行った。ところが、役所はできないと言う。話が違うじゃないかと言うので、そこでまた言い合いになった。老人は憤然としてアパートに帰ってきたが、心が収まらない。アパートの隣人に話をしたところ、自分は前に遺言を作ってもらいに公証役場に行った、同じ死後のことだからあんたも公証役場に行って頼んでみたら、と言われたので来たのだということでした。

この件は、あるボランティア仲間の葬祭業者に連絡し、その予算の範囲内で希望どおり簡素な葬儀と遺骨の運搬・埋葬を行うという話がまとまりました。少子・超高齢化の時代を迎え、こういう問題はますます増えることでしょう。

鉄道一筋に42年、仙台駅長を最後に定年退職した故大沼清愼氏の遺句(川柳)集「風の韻」の中の次の句が身に沁みます。

人生劇場最後の幕がむずかしい

 

 

 

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