「知りたいってんじゃなくて、この頃しみじみ思うんですがね、日本のお役人やお偉方は、どうして国民を信用しないんですかねえ」
「さあて。やっぱり自分たちの方が国民より偉いと思っているからねぇ。それに、国民の中にはおかしなことをするのもいるしね」
「そりゃ人間だから、国民の中にもお役人の中にもおかしなことをするのもいますがね、それは数からいえばほんの一握りで、大多数の国民は幸せになりたいってんで、真面目に頑張っているわけでしょ。どうして、国民を信用して、その力をのびのびと発揮できるように導いてくれないんですかねぇ、それが民主主義の政治や行政というものでしょうが」
「ははぁ、読めた。八つぁん、お前、NPOに対する税制優遇措置のことを言ってるんだね」
「さすがご隠居さん、鋭い。あっしらは、税制優遇だとは思っとりません。当たり前の措置だと思ってますがね。だって、NPOの方は、みんなのために、エネルギーやお金を注ぎ込むんですぜ。その活動を支える分まで税金を取ろうってのは、鬼みてえなもんだ」
「これこれ、人聞きが悪い。だけど、優遇制度をつくると、すぐそれに便乗して税金を逃れようとする輩が出てくる」
「そのことを初めから言ってるんでさ。そういう輩のためにやたら要件を厳格にしたら、大多数の良い活動が犠牲になってしまう。悪いことをした輩は、後でうんと懲らしめればよい。そして、良いことをする輩には、思い切り活動できるようにしてやればよい。それが、国民を信用するということじゃござんせんか」
「わしも、まったく同感だよ。八つぁん。それは、親が子供を信用して育てるか、信用しないで締めつけて育てるかと同じだ。締めつけられた子は、なかなかうまく育たないねぇ。お前も、締めつけられてた方じゃなかったかぇ。おや、もう帰るのかい」
「これで、話も締めとしましょう」