堀田 松山さんは前作「一本の手」に続いてグループホームを描いた二本目の映画ですが、今回の脚本を作られたきっかけは?
松山 「一本の手」で圧倒的に多かった反響が「その先を書いてくれ」というものだったんです。前作は介護福祉士の専門学校を出た少女が施設や老人ホームの現状を見てこれではいけない、もっと小さくていいから温かい、思いやりの深い場所が欲しいと自らグループホームを作ろうとする。そこで終わりなんですが、一人で寂しくてしょうがないから自分もぜひグループホームを作りたい、家も土地もあるからと、そんな手紙がぼくのところに十数通来ました。それで今度の映画を作ったんです。
堀田 陰惨になりがちなテーマを笑いや涙でうまく包みながら、グループホームという新しい暮らし方を問題提起されている。これを見てよしやろうという人がまた増えてくるでしょうね。
松山 そう思います。ただこれは娯楽映画なので、最後はハッピーエンドにしなければいけないけれど、それぞれの裏側では本当に大変な状況が起きているということも描いたつもりです。ぼけた老人を抱えたら、家族はどれほどの苦しみを味わうのか。健康な身体、自分の夢などさまざまなものを失って、まさに現実は一家崩壊なんですね。
堀田 (うなずきながら)栗山さんはそんなシナリオをご覧になって、どう感じられましたか?
栗山 まず、すじがいい、直感でおもしろくなるぞと思いましたね。どう訴えるものがあるか、これは映画で一番大事なことなんです。単にぼけ老人を抱えた家族の悲惨な話に終わっていない。さすが松山さんだなあと。ただぼくと松山さんは世代が違うし、ぼくなりに咀嚼して、悩んで、ああいう撮り方になりました。
堀田 重いテーマをそのまま撮ったら娯楽映画にはなりませんし、演出のご苦労もあったと思いますが。