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実際に会ってみて、こちらの話を十分に聞いてくれる人かどうか、何か問題が起きたら一緒に考えてくれそうかどうか、など自分にメリットのある基準に当てはめてみるんです。

魚屋で魚を選ぶように、介護保険で介護サービスを選ぶ。そう、介護サービスは商品なんです。安くて質のいい魚屋が生き残るように、質のいい介護サービスが残る。それが市場原理というものです。米を買うのと同じ感覚でヘルパーを利用する。そういう時代に入ってきています。これだけ高齢者が多くなると、介護サービスは特定の人が対象になるのではなく、多くの人が利用する非常にポピュラーな消費財となる。もう福祉という範ちゅうを超えて、消費生活そのものです。

 

ケアマネジャーを育てるのは市民

 

介護サービスが商品なら、利用者は賢い消費者にならないといけませんね。それにしても、現在は利用する事業者ごとに契約を取り交わさなければならないなど、煩雑さが目立ちます。

 

その通りです。ケアマネジャーを良くするのも悪くするのも利用者次第。より良く育ってほしいと思うなら、なんでもかんでも口に出して言ってみることです。

医療現場では患者とのやりとりの中で臨床医は成熟していく。ケアマネジャーも同じです。介護は生活支援、感情の赴くままに行動しようとする人間相手の仕事ですから、生活のすべてを引っかぶる気持ちでやることが必要でしょうね。

利用者に煩雑な印象を与えるのももっともな話で、ホームヘルパーに来てもらうのに建て売り住宅を買うぐらい(笑)の書類が必要なんですから。ああいう重装備の契約書類は、いずれもっと簡便になるんじゃないかと思いますよ。命にかかわる手術承諾書だって、書類一枚きりの実にシンプルな書式じゃないですか。

 

介護保険が本当に利用しやすい制度として定着するのはまだまだ先でしょうか。

 

今はようやく枠組みができたところ。住宅でいえば、柱が立って、粗壁ができて、そこに屋根が乗っかったところでしょうか。だけども、まだ窓ガラスは入っていないし、内装もごれから。そこに人が入ってゆったりと過ごせるようになるには一五年ぐらいかかるでしょう。使い勝手のよい住宅に作り上げていくのは市民です。

魚を買うようなごく普通の生活感覚で、ケアマネジャーとも行政の窓口とも市民がかかわれるようになれば、介護保険はずいぶん利用しやすくなると思います。

 

 

 

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