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介護保険の問題点の一つに要介護認定のバラツキかある。高齢者の生活を大きく左右する問題だけに、精度の向上が市町村として取り組むべき大きな課題になっている。その解決策の一端を愛知県犬山市に見た。

(取材・文/高山歩)

 

行政が積極的に関与

 

犬山市は愛知県北部、木曽川の南岸に位置し、日本最古の天守閣(国宝)で知られる犬山城を中心に栄えた城下町である。市内のあちこちに歴史のあるお寺や神社が点在し、三四〇年余りの伝統を誇る「木曽川犬山鵜飼い」や、木曽川を手こぎ船で一気に下る「日本ライン下り」が観光客に人気だ。また、「明治村」や「日本モンキーパーク」「リトルワールド」などファミリー向けアミューズメント施設も充実し、観光が基幹産業として市の財政を支えている。二〇〇〇年四月一日時点の市の人口は七万一八八七人。このうちの一万一一四五人が六五歳以上の高齢者で、高齢化率は全国平均を下回る一五・三%となっている。

城下町の土地柄としてよく保守的という言葉が出てくるが、市民の口からは、例に漏れず「『見知らぬ人を簡単に家に上げない』『自分のことは自分で』という意識が高齢者の間に強い」との声が聞こえてくる。この意識を最大限に酌み取りながら、さまざまな工夫を盛り込んでスタートしたのが犬山市の介護保険制度だ。キーワードは「公平・公正」。介護保険制度の基本理念に「民間活力を導入し、行政は調整役になる」との考えがあるが、市では行政が積極的にサービスの提供に関与している。制度のスタートを前に県から委託を受けて要介護認定のモデル事業を実施。この事業を通じて「民間への委託は不可欠。しかし、市が関与すべき部分もある」との結論に至ったからだ。

 

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木曽川犬山鵜飼

 

 

 

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