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ふれあいボランティア考

 

市民が育てるNPO

 

6月8日付けの朝日新聞に載ったある投稿がNPO関係者の間で波紋を呼んだ。社協でヘルパーとして働く女性の奮闘模様なのだが、その中で彼女は「あるNPOの介護会社の説明会に行って」疑問を持ち、「こんな会社がNPOであり、県知事の認可を受けている」「NPOの名の下に老人とヘルパーを食い物にされたのではたまらない」と糾弾する。1600字程と大きなコラム。確かに一読するとNPOのすべてが悪徳業者のような印象も与えかねない論調で、それが各地で誠実にがんばっている福祉系NPOの人たちに大きな戸惑いを与えた。

真意を聞こうと寄稿者に連絡を付けたあるNPO開係者によれば、決して悪気はなく純粋な思いからの投稿だったという。事実、問題の団体はNPO法人だった。しかし、本人の思惑を超えてNPOという活動に誤解を与えかねない文章のまま、投稿を掲載した紙面の意図は何だったのだろうとふと思った。

折しも、NPO法人への税制優遇問題の議論の中、大蔵省は、同じ介護保険事業で社会福祉法人は非課税、NPO法人は課税の方向に動いている。どうも「NPO法人は玉石混淆」で判断がつかないから税の優遇はまかりならぬというものらしい。ならば、社会福祉法人、宗教法人、医療法人等々が脱税や大きな社会的事件を次々と引き起こしてきた例はどう見ればいいのだろうか。NPO活動を「新米いじめ」していると見られても仕方のないところではある。

どんな形であれ悪用する者はいる。これからの時代に必要なのは行政の硬直した入口規制ではないはずだ。日々の業態や活動内容をチェックする社会の目、そのための情報公開である。多くのNPOはそうした目を怖がりはしないし、偽の衣を剥がすのもまた、私たち市民の役割なのだと思う。

 

 

 

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