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そこで最近、会員を対象にした介護セミナーを始めた。173名が参加したこのセミナー、「ボランティアというと他人の困りごとを助けるのが通常の考え方、しかし自分の困りごとを解決するのに互いに助け合うのも一つのボランティア」という発想の転換がきっかけとなった。ここでのホームヘルプ2級講座は「自分が介護するときあるいはされるときに役立つだけでなく、同時に地域でのボランティア活動も自信を持ってやれるようになり、助け合いの底辺を広げられる、自分が体験していることは地域の中へでもすーっと入って行けるんですよ。地域とのかかわりの中で身に付けた社員が定年後全国各地に散らばり、地域の中に溶け込んで活躍してくれることを願っています」と吉永さんは将来を見つめる。

「コウノトリ」というボランティア活動がある。毎週木曜日の昼休み、社員が交替で武蔵野市の一人暮らしの高齢者を訪問、お弁当を届け、安否を気遣ったり話をしたりという配食ボランティアである。また、グループ会社で不要になった備品、机、作業衣、パソコンなどを市内の草の根団体などに寄付し大変喜ばれている。いずれも“地域と共に歩む”グループの面目躍如の活動である。

私はこの取材を通じ、企業と地域市民との関係の“あるべき姿”を見た思いがした。「なぜ?」との問いに笹田さんは「企業というのは健全な利益を確保することが大切です。健全というのは、社会活動をまっとうしてなお利益を出すということ。従って、並みの努力では不可能ということです」と明快だ。企業と地域市民のこの関係が、全国にますます広がることを願ってやまない。

(取材・文/三上彬)

 

 

 

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