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通貨の持つ富の蓄積(お金を貯める)機能について、国の通貨は、この機能を持つが、地域通貨は、全く持たない(ふれあい切符、おうみ、クリン、レッツ、タイムダラーなど)か、ほとんど持たない(モノや国の通貨と交換できる地域通貨は、多少の蓄積機能を持つ)。

通貨の持つ信用供与(お金を貸す)機能は、国の通貨は持つし、一般に、利子が付くのであるが、地域通貨は、全く、あるいは、ほとんどこの機能を持たない。地域通貨の中には、地域の経済活性化のために早く使わせる目的で、一定期間が経つと価値が減ったり、使えなくなるものもある(千葉のピーナツ、イタリアの時間銀行など)。

 

地域通貨の社会的機能

 

地域通貨は、国の通貨の持つ冷たさ、つまり、富の蓄積機能がもたらす貧富の差による人の尊厳の破壊や資源の浪費、信用供与機能がもたらす投機による経済的破綻や労働意欲の減退、インフレやデフレによる生活の崩壊などから地域の人々を守る役割を果たす。世界恐慌のあと地域通貨が生まれ、再び、ここ十年ほどの世界的な景気不安定の間に先進諸国で自然発生的にこれが生まれているのは、地域通貨にこのような役割があるためである。

地域通貨には、「その通貨によるモノやサービスの交換(取引)を地域内に限定することによって、その地域の経済を活性化すること」の方を主たる目的とするもの(これらは、交換の対象が広く、ある程度の富の蓄積機能を持ち、また国の通貨とも交換できるものが多い)と、「地域の人々がサービスを交換し合うことによって、相互扶助による温かい交流を生み出し、コミュニティーを再生すること」の方を主たる目的とするものがある。

それらに加えて、市場で生かされない人々の能力を、地域通貨で生かして使う役割も持つ。六歳の子や九二のおばあさんがタイムダラーのサービスを提供するのは、その好例である。

ふれあい切符は、もっぱら相互扶助によるコミュニティーの再生を目的とするもので、そのため、通貨とはいえ、財産性(法的交換請求権)すら持っていないところに特徴がある。

 

 

 

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