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表6.2.3-3 SARTまでの距離と設置したSARTの種類

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6.2.3.3 観測結果

表6.2.3-3に示す距離でSARTを投下して観測した結果を資料5の図5-1〜図5-8に示す。PPI表示および関係する1方位をA-scope方式で表示している。PPI表示とA-cope表示の関係は図6.2.3-3に示す通りである。PPI表示方式でもA-scope表示方式でも4点で応答する方式のSARTの信号が多数見えるのは、先頭部分は作業船からの反射が受信できている部分だが、応答信号として4点以上見えているものが多い。その理由は、SARTは9,500MHzの高い方から9,300MHzの低い周波数へゆっくりと掃引しながら応答しており、この状態では幅の広い信号として受信される。周波数の掃引を戻すときには早く戻すので、このときには幅の狭い信号として受信される。そのために狭い信号や幅の広い信号が混ざって多数見える結果となる。

従来の水平偏波SARTに対応した最大受信電力の計算曲線図(反射率は1、反射時の位相変化はπ)に、円偏波SARTの距離に対する受信電力の変化を記入したものを資料5の図6.2.3-4に示す。距離が1.4マイルの場合を除いてどの計測値も計算値より高く観測されたことが分かる。円偏波が海面で反射する際の反射係数の詳細が不明であったので、反射率は1とし反射時の位相変化をπ/4ずつ変えて計算結果と比較したところ、位相変化を5π/4(225度)とした場合に計算値と計測値が重なる結果が得られた。その状況を図6.2.3-5に示す。この受信強度の比較は水平偏波SARTにおいても比較したかったが、計測時間の関係で円偏波SARTの方を重点的に実行したため残念ながら近距離の水平偏波SARTの計測データが無い。

円偏波SARTでは、偏波面の違いによる損失があるにもかかわらず、水平偏波での計算結果よりも強い受信強度の観測結果が得られたことは極めて興味深い。反射時の位相変化の違いによる干渉が、SARTの受信可能な距離を増大させる効果として現れた。

レーダのPPI画面の観測中にも円偏波SARTは、水平偏波SARTよりも安定して応答が見られ、しかも映像の輝度等の点からも強いことが観測された。安定した応答が得られることは、水槽実験での比較と同じ結果である。

SARTの到達距離が伸びることはSARTの有効性を大きく高めるものであり、円偏波と水平偏波の両SARTの伝搬特性に関する詳細な比較データを近々に測定したいと考えている。

 

 

 

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