はしがき
この報告書は、当研究所が平成12年7月に実施した「介護員等福祉関係職員の労働条件に関する調査」の結果をとりまとめたものです。
来るべき21世紀には、我が国では本格的な少子高齢化社会を迎えることになりますが、そのような状況の中で、高齢者等の介護問題は、本年からの介護保険制度の施行にも象徴されるように極めて重大な課題となっています。
これを人事・労務の観点からみますと、今後介護等福祉関係職場で働く人達は急速な伸びをみせることが予想され、また、社会的にその専門性を確立・評価することが喫緊の課題になってくるものと予想されます。
平成11年、人事院は内閣及び国会に対し、国の福祉関係機関に勤務する国家公務員を対象に「福祉職俸給表」を新設するよう勧告し、これが平成12年から実施に移されていますが、このような措置も以上のような状況認識に立つものと理解されます。
「福祉職俸給表」については、公立の福祉施設でもその導入が検討されているところですが、一方において、全国6万有余の福祉関係施設で働く80万人にも及ぶ福祉関係職員の労働条件については、その実態は必ずしも明確には把握されていないものと認められ、その実態の把握と今後におけるその整備は我が国において重要な課題になってくるものと考えられます。
当研究所では、以上のような認識に立って、将来的には200万人にも膨れ上がると見込まれる福祉関係施設で働く指導員、寮母(父)等「直接処遇職員」の労働条件の実態について、雇用、労働時間、休日、休暇、賃金、職業性の疾患等の観点から総合的に調査を実施したものです。
今回の調査は、通信調査を中心に実施するとともに調査の精度を高めることを狙って全国8地区において実地調査を行いましたが、回収率は50%をはるかに超え、この種の調査では異例のものとなっております。これは、調査対象となった各施設が今回の調査結果に高い関心を寄せて戴いたことの証左であると考えております。調査にご協力戴いた各施設の関係者の皆様に心からお礼申し上げます。
調査結果は、第1部「要約」、第2部「結果分析」としてまとめ、特に、第2部では、調査事項ごとに調査結果全体を分析した上で、施設の種類別、規模別、施設設立後年数別に記述し、さらに母集団の多い「特別養護老人ホーム」について規模別、設立後年数別に特徴を記述しており、最後に「まとめ」として、一歩踏み込んで、調査結果全体に対する評価と今後への提言を述べております。
この調査結果が、それぞれの福祉関係施設、その他の関係の皆様方に広く参考に供され、将来に向かって福祉関係職員の労働条件の改善に資すことができれば、幸甚と考えております。
最後に、この調査は、財団法人日本船舶振興会(日本財団)の補助事業として実施されたものであり、ここに同会の援助に対し深甚の謝意を表す次第です。
平成12年12月
財団法人 日本人事行政研究所
理事長 丹羽清之助