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この表のデータは多少古いが、今回の国際比較の調査結果からみて、大勢に影響するほどの大きな変化は見当たらなかった。

 

第3表 先進6ヵ国の公務員雇用の全雇用に対する比率

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(注) 公務雇用比率(1):国家公務員、地方公務員の総数

公務雇用比率(2):国家公務員、地方公務員、公共企業体職員の総数

 

このデータから判断できるように、わが国の公務員は既に先進諸国で最も「小さな政府」に勤務しているのである。ただこれまでの公務員社会に対しては、民間との交流はなく、就職の代りに就省(社)し、退職後に再就職の必要があるなど、とかくの批判があることは事実である。しかし今回の調査結果からみて、公務員の生涯設計に関連する民間からの指摘は、なぜか極めて少なかった。公務員からの情報発信の貧困を、改めて実感した次第である。NPMのコア施策の一つが、こうした国民規模の長期人材計画にあるところから、先進各国の対応を見守りたいところである。これから必要なのは、長期のヴィジョンに基づく具体的な雇用目標を設定し、達成に向けて地道な努力を重ねることではなかろうか。

さて2年度にまたがる今回の国際比較調査のむすびとして、一言述べておきたい。それはかつてわが国の国家公務員は、依然として「お上」ではないかと批判されながらも、内心には「国政に関与する」という誇りと自負とがあった。しかし新しい公務員制度に移行してから半世紀、ひところ諸外国から賞賛されたこの矜持は、いつしか薄れてしまったようである。相継ぐ高級国家公務員の不祥事件は、確かに弁解の余地はない。しかし最近の「官療バッシング」に対しては、民間からも危惧の声が挙がっている。これから政府主導の行政になるとき、行政官の意欲が一時期より低下し、自信を喪失したのではないかというのである。

この点に関して、今回NPMを推進している先進諸国の調査においては、単なる公務員批半に終わっていない点に注目した。それらの諸国では、市民は公務員に対する批判の声をあげながら、同時に公務員が新しい施策を提案し実行する過程に対して、実効と期待の両面から、厳しい改善監視を続けている。その結果、行政や公務員部内の合理化に先立ち、国(市)民のニーズに応えるための合理化が進められているようであった。「民間からみた21世紀に期待される公務員像」には、ぜひこの点を加筆したいものである。

 

 

 

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