こうした事情によるためか、今回の現地調査に当たっては、残念ながら諸般の事情により、日本人専門研究家の直接協力を得ることはできなかった。やむなく手探り状態のまま現地に赴いたところ、現地関係者の好意溢れる理解と協力を受け、一応の結果を纏めることができた。ここに改めて国内及び現地で御世話になった方々に感謝し、この報告書のまとめとする次第である。
1 カナダにおける「市民第一」報告書の意義
今回現地オタワで最初に面接した連邦政府の財務委員会と公務委員会の担当官3人は、異口同音に1998年発表の「市民第一」調査結果に言及した。もともとこの調査は1997年7月、連邦政府の独立機関であるカナダ管理者開発センター(CCMD)の主唱により、市民第一サービス・ネットワーク(The Citizen-Centred Service Network: CCSN)が設立され、官民200人余の各界代表者が参画し、連邦、各州、市町村の各レベルのサービスに対する市民の声を集約したものである。またCCMDやCCSNが自ら調査するのではなく、調査専門のエリン・リサーチ社(Erin Rescarch Inc.)に依託されたことも記録しておきたい。
さて、この「市民第一」報告書の内容については、連邦、各州、市町村の各レベルの公務に対する市民の声(受容の程度)には、かなりな較差があることがわかった。しかし今回の現地調査は、専ら連邦政府職員に対するものであったために、各州と市町村のサービスについては取り上げなかった。この「市民第一」の内容の詳細は、いずれ機会を見て紹介できると考えるが、この報告書では専らこの報告書の主な特色について述べておく。
第1の特色は、この調査は全国34,000の世帯に調査票を送り、2,900余の有効票の返送を得たという。