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終身職(キャリア常勤職)の公務員の最上位は、重要課長職のGS15級で、それ以上はない。それより上位のポストを得たければ、激烈な競争に身をさらさなければならない。PAは、公務員制度の外部で競争して、その資質を認められた人間が占めるポストであり、権威と権限がある代わりに、責任があり、身分保障はない。SESはその中間的なもので、主として内部から登用されるという点では、競争はそれほど厳しくないが、資質の厳しい評価と身分保障のないことはPAと同様である。

SESは、1979年の公務員制度改革法で創設されたもので、日本の指定職制度に似ている。管理、監督、政策に関与する高級幹部で、GS15級より上位の職と位置付けられる。ただし大統領任命職で上院の承認を必要とする職や司法機関と立法機関の職員などは除外されている。

SESには2種類の職があり、任命には4つのタイプがある。一つはキャリア・リザーブ職で、政府の中立性を重視する職位とされ、キャリア公務員(終身常勤職)からのみ選抜される。他は一般職で、キャリア以外にノンキャリアPAでもその他の選抜でも条件は問わない。ただし、一般職の総数はSES全体の4分の1以下に制限されている。

任命には、人事管理庁が承認した幹部選抜基準を満たした候補者から、各機関が高度な管理能力を持つことを条件に選抜している。一般職のみ任期付き任用が可能で、その場合は3年までで、再任できない。任期付き任用は総数の5%以下とされている。ポストの総数は2年ごとに人事管理庁(OPM)が決定し各機関に割当てる。各機関はその割当ての中で任用するという仕組みで、通常は8,000名前後である。(2000年-2001年会計年度では7,744名である。)

制度発足後何度か改定され、現在では、大半のSESはキャリア職で、GSから選抜されている。ノンキャリアのPAであるSESの総数は全SESの10%以下に制限されている。制度創設から20年以上になり、ようやく定着したが、それでも、各機関内のポスト(イントラ・デパートメント)への再任用がほとんどで、キャリアとして所属した機関を超えて(インター・デパートメント)他の機関に再任用されるなどの流動性に乏しいことが批判されている。

部長職と一部の局長職がSESに割り当てられているが、大半の局長職以上の幹部は、PAで占められる。結局、外部との競争の薄いキャリア公務員は、幹部の指示を受けて実務を執行する中級幹部職以下のポストを占め、外部からもそのように認識されている。このように、国民の信頼と不信のバランスの上にアメリカの公務員制度は機能している。それが、結果として、アメリカ公務員制度の質の高さを保証しているといえるだろう。

 

 

 

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