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日本財団 助成事業

先進6ヵ国国際比較

民間からみた21世紀に期待される公務員像(2)

第2年度:アメリカ・カナダ・日本編

 

プロジェクトの概要

戦災の廃嘘の中からわが国の経済が復興した陰には、優秀な「官僚」の存在があったとして、内外から賞賛された時期があったことを思い出す。そのころ、日本経済の急成長を支えたのは、政界、官界、財界の3本柱の緊密な協力関係だとして、海外から「日本株式会社」を羨望する声さえ起こったほどだった。こうした高い評価を受けた「戦後官僚の第1世代」は、伝統的な「先憂後楽」の心情を「全体の奉仕者」の衣装に包み、やがて来る豊かな時代を夢見ていたに違いなかった。

しかし1980年代になると、片や脱工業化の傾向を強めた経済構造の変革と、他方公務員処遇の官民匹敵原則の定着とにより、「戦後官僚の第2世代」は豊かな勤務環境に恵まれ、「全体の奉仕者」意識に陰りが現れたのではなかったろうか。その証拠としては、大多数の公務員は職務に精励している最中に、高級公務員の不祥事が続出したことであった。その結果、かっての公務員の心意気は、どこに雲散霧消したのか危倶され、平成11年には急遽新たに「国家公務員倫理法」の制定を見たのだった。

さてこの間に先進諸国の行政と公務員管理の実情を調べると、1990年代に入って加速されたいわゆる「新しい行政管理」(New Public Management: NPM)の諸施策は、人々にその実効が証明された。とくに英米両国におけるサッチャリズムとレーガノミックスに見られるような大胆な施策は、やがて広く他の国々からも注目された。そのNPMの一環として取り上げられたのは、公務員の役割、資質さらには処遇の問題であった。その他の先進諸国においても、国民(市民)の目を通じた公務員管理の見直しが、ようやく意識された次第であった。

今回の研究プロジェクトは、このような内外の情勢を念頭に置き、民間からみた新しい世紀の公務員像を、先進6ヵ国の現地調査に基づく国際比較によって、なんとか描こうとしたものである。幸い日本財団の補助により、昨年度には英、独、仏の3ヵ国の現地調査を行い、報告書を通じてその結果を公表した。今年度は、まず米、加両国の現地調査を行い、引続きわが国について他の5ヵ国以上に詳しく調査した。しかしこの種の調査は内外に前例がなく、しかも限られた範囲の調査を行うしかなかったところから、すべてを調べ得なかったことは遺憾であった。いずれさらに充実した国際比較調査を行う機会に恵まれれば、関係者一同、この上ない幸いである。

 

 

 

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