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はしがき

1980年代以降、先進諸国では競うように行政改革に取り組んでいる。その直接の原因は、第2次世界大戦の各国政府が一斉に導入した福祉指向の行政が、次第に財政を圧迫するようになったからであった。さらに各種租税と社会保障系の国民公的負担の合計は上昇し、個人所得の50%を超え、国民の勤労意欲の低下さえ問題視される国さえ現れたからではなかったろうか。他方、経営の国際化は予想を上回るスピードで進行し、グローバル化の呼称の下に、どこまで進展するか分からないほどである。いまや国民国家を前提とした行政に対しては、鋭いメスが加えられる状態にある。

こうした状況の中で、19世紀後半から20世紀前半にその体系を整えた行政は、次々に改革を迫られるようになり、20世紀最後の4半世紀にはようやくその方向が見えてきた。それは「新しい行政管理」(New Public Management: NPM)と呼ばれるもので、行政を公的管理と理解し、企業の経営手法を大胆に採用し、「小さな政府」を目指したもののようである。そのためには国民(市民)の声を反映した行政施策を、効用を重視して優先序列を決定し、その執行に当たっては公務員の意識変革を求める内容になっている。

わが国においては、すでに省庁の再編が行われ、ほどなく公務員制度の改革に伴い、定員の25%削減、独立行政法人の設立も決まっている。21世紀の当初を飾るこの努力は、施行後半世紀を経過した現行公務員制度の抜本的改革であるために、その成果を衷心から希望する次第である。

これまでの人事行政改革は、とかく政治主導とはいえ行政府内に事務局を設け、行政府の職員を中心に情報を収集するため、残念ながらその結論は、ともすれば公務員を弁護するものとして、国民の誤解を招きかねない内容になりかねなかった。そこで今回の調査研究は、内外共に純民間の立場から「21世紀の公務員像」を模索したわけである。しかもNPMは、先進諸国の福祉国家構想の挫折を契機に発想されたところから、同じような事情にある先進6ヵ国―日、米、独、仏、英、加―について、2ヵ年計画の現地調査に基づく国際比較研究を試みたところである。

幸い日本財団の暖かい補助により、1999年度には英、独、仏の3ヵ国を調査し、今2000年度には日、米、加の3ヵ国を調べたところである。ここに改めて日本財団のご配慮に感謝すると共に、この前例のない調査プロジェクトが、新しいミレニアムにおける人事行政改革に貢献することを祈念する次第である。

平成13年3月

財団法人 日本人事行政研究所

理事長 丹羽清之助

 

 

 

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