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深刻な火山災害は1万人以上の死者を出す(表4)。このような大災害には3つのタイプがある。第1は噴火の規模が大きく、著しい影響が広い範囲に及ぶ場合である。タンボラ火山(インドネシア)1815年の噴火は、歴史上最大規模の噴火で、火山のある島とそれに隣接する島は、降下火砕物と火砕流にすっぽり覆われて、島民のほとんどが死亡した。その更に周辺でも、農作物の壊滅によって飢饉が起き、死者の総数は92,000人に達した。

大災害の第2のタイプは、火災流や泥流などの高速の流れが人口密集地を襲う場合で、噴火の規模はそれほど大きくなくとも、災害は深刻になりうる。プレー火山(西インド諸島)1902年の噴火では、山頂から8km離れたサン・ピエール市が火砕流に襲われ、町は全滅して29,000人が死亡した。冬季には、火砕流は氷雪を融かして泥流(融雪泥流)を生み出すことがある。1985年に起きたネバド・デル・ルイス火山(コロンビア)の噴火では、泥流が山頂から50km下ったアルメロ市を襲い、2万人以上が死亡した。

大災害の第3のタイプは、噴火によって洪水や津波が誘発され、広域に2次災害が起こる場合である。日本で最大の死者を出した火山災害は、1792年に雲仙・眉山が山体崩壊をした時のもので、死者の大半は有明海に発生した津波による。

一方で、火山は人間に大きな恵みをもたらすことも忘れてはならない。豊かな農地は火山の営みによることが多いし、温泉や美しい風景は重要な観光資源となる。今、洞爺湖温泉の住民は、有珠山から受けた恵みと災害の間で苦闘している。火山国に暮らす我々は、火山と縁を切ることはできない。我々が取るべき道は、火山のことをよく知って、火山と賢くつきあうことである。

 

 

 

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