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本質的なこと、この自然の美しさ、神々しさ、思わず手を合わせたくなるような民間信仰的な自然崇拝のようなものを『ふきまんぶく』や『とべバッタ』などの本で描きましたが、その後でこの本を描いたことは僕の汚点です。汚点ですが、ぜひ見てほしいのです。これを読んで終わりにします。

 

『やまからにげてきた』

やまから いろんな ものが にげてきた

たぬきの おやこが にげてきた

おおきな むしも ちいさな むしも にげてきた

とりは そらを さわがしく

とぶことも はしることも できない ものは しずかに しずかに

ちっちゃな いきものは ちっちゃな こえで

みんな しにものぐるいで にげてゆく

にげていった さきで すむところが あるのかしら?

あきらめてしまった ものも いる

ものすごい こうじが はじまって

にげようとした ものも にげおくれた ものも

みんな しんだ

 

本当にたくさんのタヌキたちが死にました。まさにドキュメント絵本です。深さ43m、周囲の広さが東京ドームが7個分、セ・リーグとパ・リーグの試合が全部同時にできる大きさの処分場です。

この本は両側から読めます。今度は反対側から。

 

『ゴミをぽいぽい』

あれも ほしい これも ほしい

やすいから どんどん かっておこう

あまったから ぽい あきたから ぽい

こわれたから ぽい まだ つかえるのに ぽい

めんどうだから ぽい うれのこったから ぽい

じゃまな ゴミを ぽいぽい

ゴミあつめの くるまが みんな もっていってくれる

ゴミは もやせば なくなるの?

もえた あとの 灰は どこへ ゆくの?

いろんな まちから 灰を つんだ トラックが やってくる

やまの なかの おおきな おおきな ゴミすてばを めざして

ゴミすてばから どくの みずが しみでて ながれてゆく

 

都会の大量生産、大量消費、大量投棄の僕らの文明が、山奥に静かに棲んでいた生き物たちとごみ処分場という忌まわしいものとを出会わせます。そしてそれは海を汚し、ボーダレスに僕たちの日本列島を汚し、地球中を汚しまくっています。

今日は瀬戸内海に関東のごみが1日千トン横浜港から船出しているという話も、現地に行ってきたのでしたかったのですが、時間がなくなりました。また後のチャンスに話せたら報告したいと思います。

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