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完成したブロックは、水際に設けたコンクリートづくりのスロープに集められ、盤木という太い角材の上にすえ付けられます。羊蹄丸IIのブロックの数は主なもので90個余り。船底の中央部分を基準に前後へ、そして上へと積まれていきます。これらのつなぎ合わせにも電気溶接が使われるので、今度は船の長さ方向の縮みがひどくなります。

羊蹄丸IIは海面から2メートルほど上のところに、船の幅いっぱい、高さは2階分、長さは船尾から船首を見通せるくらい、広々としたスペースがあります。ここに、全長にわたって4列の線路を敷き、車両を連結したまま積み込みます。貨物列車はいろいろな車種で編成されているので、鉄道連絡船の「公称車両数」は、長さ8メートルの15トン積み有蓋貨車が何両積めるかによって決めています。そのため線路の長さが少しでも8メートルの倍数から欠けると、各線とも1両づつ少なくなり、鉄道連絡船にとっては大問題なのです。船の長さが縮むことは、線路の長さが縮んで、計画の車両数が積めなくなることを意味するのです。

進水前の長さは船底だけで計測できるので、どんどん縮んでいくのがわかるだけに、当事者にとっては気の重い話ですが、桜島工場では早い時期から細かな縮み防止策をたて、細心の注意をはらいながら工事を進めた結果、羊蹄丸IIは計画通りの寸法に仕上がり、一同胸をなでおろしました。

羊蹄丸IIの公称車両数は、左側の線から12両、14両、10両、12両の合計48両です。

 

緊張の一瞬、進水!

船体がほぼできあがると、舵やスクリューを取りつけて、船を水に浮かべます。これが「進水」です。

羊蹄丸IIの進水は、水面に向かって、スロープに敷かれた2本のスベリ台の上を、片方だけでも幅80センチ、長さ97メートルもある巨大なスキー板のような木台に乗ってすべり降ります。雪の代わりにスベリ台に油を塗って。

何の動力もないのに、全長132メートル、重さ3200トン(当時)もあるビルのような大きな船が、予告された時間に、静かに静から動へと移り、やがて秒速5メートルで、船尾からしぶきを上げて水の中にすべり込む様子は他に例のない華やかな、そして壮大なショーです。

しかし、必ず成功するとは限りません。長い進水の歴史の中には、さまざまな事故がありました。最後まですべらなかったもの、あわてて式の前にすべり出してしまったもの、途中でスリップしてしまったもの、また水面に下りたとたんにひっくり返ってしまったものなどなど。幸い鉄道連絡船では大きなトラブルはなかったものの、当事者にとっては最後の最後まで安心ができません。

それだけに、これまでにする準備が大変です。

 

 

 

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