この写真は廃船から12年後の明治7年(1874)、内田九一(うちだくいち)によって撮影されたものです。内田は明治5年(1872)に新政府の依頼で初めて明治天皇の御真影(ごしんえい)を撮影した長崎生まれの写真師で、この写真も解体前に記録のため新政府からの依頼で撮影された可能性が高いと思われます。幟(のぼり)や吹(ふ)き流(なが)しがブレていて見にくいのですが、櫓(ろ)も据(す)えるなど御船蔵から引き出された後に往時(おうじ)の姿を整えてから撮影されているのが分かります。“天地丸”の姿をとらえた唯一の写真で、各部の特徴を確認できる貴重な資料です。(所蔵:東京国立博物館)