日本財団 図書館


No.10/36

 

海をひらくI

 

人類は、これまで快適な生活を営むために、さまざまな分野において近代化を進め、地球上の資源をその目的のために利用してきました。しかし、この生活を支えてきた石炭や石油などの資源をはじめ、広い土地を必要とする飛行場などの大きな物を建てる場所までもが無くなりつつあります。そこで新しく注目され始めたのが「海」の利用です。その用途は、エネルギー源の開発や魚の養殖、飛行場の建設などさまざまな分野におよんでいます。

 

1. 海洋発電の展望

さて今日では、新しいエネルギー源として、世界各国で海洋発電の研究が進められています。海洋エネルギーによる発電システムで利用されるのは、波や潮汐(ちょうせき)・海洋の表面と深海の温度差などがありますが、一番簡単なのが波を利用した波力発電(はりょくはつでん)システムで、実用化に向けて実験が行われています。現在日本では、マイティーホエールという装置を使って実験を行っています。

 

マイティーホエール図

019-1.gif

全長:50.0m 幅:30.0m 喫水(きっすい):8.0m

排水量:4,380トン 最大発電量:110キロワット

 

2. マイティーホエール

マイティーホエールとは、科学技術庁と海洋科学技術センターが開発した波力発電実験装置(建造:石川島播磨重工業(株)相生工場)のことで、全長50メートル・幅30メートル・排水量4,380トンの鋼鉄製の「クジラ」の型をしています。この波力発電装置は、十年以上に渡り研究されてきた波の力を利用して電気を生み出すクジラです。まだ実用化はされていませんが、将来有望とされている新システムといえるでしょう。波の力で発生した空気圧でタービンを回し発電するシステムで、生み出される電力は、最大時で110キロワット、凪(なぎ)の時も含めて計算すると年間平均で約14キロワットと一般家庭4〜5軒分の電力程度と、驚くほどの少量ですが、それでも従来のシステムに比べると波のエネルギーを電力に転換する効率は3倍以上です。また、発電能力だけでなく、消波堤(しょうはてい)や圧縮機を利用した水質浄化機能(すいしつじょうかきのう)もあわせ持っています。

 

019-2.gif

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION