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稲盛氏が意図する民主主義は、“人民による、人民のための、人民の”政府のことで、この条件を満たすものでなければなりません。稲盛氏は日本にも民主主義の形態があることは認めていますが、官僚政治がいまだに本当の権力を握っており、様々な意味で実質的には民主主義ではないとしています。

今の日本に必要なことは第二次世界大戦の敗戦という大きな代償を払って、われわれが手にした「民主主義」というものを、本来のあるべき姿で実現させることだ。新憲法により、主権在民が宣言され、国家運営については国民によって選ばれた議員によって構成される国会を中心に三権を分立して行うことが原則とされた。こうして日本は、形の上では欧米諸国と同じような民主主義の国となった。しかし、実態は既に述べたように原則とはずいぶんかけ離れている。

主権在民とは、国民が主人公であり、国家の主権者であるという民主主義の最も基本的な原則である。憲法前文に「そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであって、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである」と述べられている。しかし、この「人類普遍の原理」が形だけのものになっている。(『新しい日本 新しい経営』より)

 

 

 

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