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広い社会学的な意味での宗教を指す、古くから存在する日本語に近いのは、“道”(みち、どう)もしくは“教”(きょう)ということになるでしょうか。儒教の様々な形態がそうであるように、その意味で心学は宗教だと言えるのです。日本人と西洋人の間に存在する宗教という言葉にまつわる誤解は、「あなたの宗教は何ですか?」という質問を西洋人から受けた日本人がしばしば「ありません」と答えることによって、さらに増幅されてしまいます。宗教と倫理が深く結びついていると考える西洋人が、日本人には倫理観が欠如していると考えても不思議ではありません。しかし宗教をもたないと言う日本人の方でも、自分たちが非常に強い倫理的な信念をもっていることを主張するでしょう。すると西洋人は言います、「やはり宗教をおもちなのですね」と。私が何をどう説明しても、宗教という言葉の使い方からくる意味の食い違いを整理できそうにありません。はっきりさせておきたいのは、心学が宗教だと私が言うとき、私が意味するのは“道”とか“教”であるということです。

 

 

 

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