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例えば芸能人でも経営者でも、ほとんどの場合、成功して財を成したときに、最初にすることは豪邸をつくるということです。つまり、お金を儲け、自分自身の栄耀栄華を極めることが、人生の目的と化してしまっているのです。

禅の世界には「起きて半畳、寝て一畳」という言葉があります。起きているときは半畳の面積があれば生活ができる。寝るときには一畳の広さがありさえすれば寝られるというものです。これは雲水が座禅を組むには半畳だけの場所さえあればいい、横になるには一畳の広ささえあればいいというように、修行に最低限必要な居住空間を表しています。

「財を散ずるにも道あり」ということは、富を得ても、豪邸をつくるのではなく、「起きて半畳、寝て一畳」、つまり必要以上のことは求めないということだと考えています。つまり現在の社会でも経済人、企業家が倹約、質素、清貧ということをもし心がけているとすると、その人たちがつくってくれる経済的富で社会が豊かに回っているのだから、彼らの生き様そのものが社会的な手本になり、企業人自身も尊敬されるわけです。しかし、実際には心ない人たちが多いものですから、現在でも大きな問題になっているのだと思います。

 

 

 

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