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一つは、今なぜ石田梅岩か、今なぜ石門心学に学ぶ必要があるのかということです。二つめは、なぜ石門心学が衰退したのか、ということです。これは大変重要な問題です。石門心学は石田梅岩先生が教えを開かれ、手島堵庵、中澤道二、柴田鳩翁(きゅうおう)というように、そうそうたる後継者がこの教えを広めてまいりまして、一八二〇年の段階では日本全国の中で三十四ヵ国に心学講舎ができました。当時日本は六十六ヵ国と申しておりましたので、半分以上の地域にできたことになります。そして十九世紀前半の文化・文政の時代は、なお心学は力をもっていて五十ほどの新しい心学講舎ができました。ところがその後ずっと哀退してまいります。ですから今、石田梅岩といっても「誰のことだ」と言う人が多い。また心学といっても、最近でこそ注目されておりますが、あまり内容をご存じない。今回のシンポジウムで梅岩が偉大であったということを学ぶだけでなく、なぜ石門心学は衰えたのか、その理由を明らかにすることが二十一世紀の心学の課題を明らかにするために必要ではなかろうかと考えております。そして最後に、二十一世紀に向かって私たちは心学に学んで何をなすべきか、心学をどのように受け止めるのか。この三つを討論のテーマにすることにいたしました。

そこで、まず最初に、ベラー先生のご講演を受けて、稲盛さんから、石田梅岩あるいは心学に抱いておられるお考えをお話しいただけないでしょうか。

 

 

 

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