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独自性を強調する国・日本

近代ナショナリズムによって民族の独自性と優越性の考え方が世界中に広まりました。アメリカに匹敵するほど自らを神の使命を帯びていると考えている国は、日本をおいて他にありません。日本の島々は神によってつくられ、天皇は天照大神の子孫であるという思想は、日本神話のいちばん基本のところにある考え方です。こういった考え方は日本の歴史において完全に失われることがなく、徳川時代は特に国学運動と重要な思想家であった本居宣長、平田篤胤によって復活しました。そして明治時代になって強力な近代国家が形成され、こうした考え方は象徴的な儀式、国民道徳、あるいは国体を公立学校で教えることで一般市民の文化に広がっていきました。

「国体」という言葉はなかなか英語になりにくいのですが、訳すとすれば日本独自の国の本質ということになるでしょうか。それ以前、徳川時代までは多くの藩に分かれて中央統制が弱かったわけですから、こうした思想は人々に国民としてのアイデンティティーを植えつけるのには役立ったわけです。

 

 

 

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