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襖を開けると、コの字形にずらりと座った数十人の青年達が一斉に拍手をするんです。どうやら、私が以前に流通記者をしていたものだから、何か話を披露することになっているらしい。ところが私は、記者といっても一年しか勤めていませんので、何も分からないわけです。それなのに、皆しーんとして、期待感を持って私を見ている。そのとき、なぜか石田梅岩のことが頭に浮かんだんですよ。

これは正確かどうか分かりませんが、確か『都鄙問答』の商人の道というところに「必要な物を、必要なときに、必要なところへ持っていくのが商人である」とあるんです。そのことを話し、「ところが今は、必要な物を、必要なところへ、必要なときに持っていかず、儲けようとして売り惜しみをする。そうすれば、確かに一時的には儲かるが、結果的に無茶苦茶になる上に、必要な物がなんであるか見極める目がボケてくる。しまったと思ってやり直そうとすると、今度は必要なときがいつなのか、どこへ持っていけばいいのかといったことも分からなくなる」

そういう話をした後、流通の原点は中央市場であるといった話で締めくくると、拍手大喝采。まさにこのとき、梅岩先生に救われたと思いました。ところで、谷口会長にお聞きしたいのですが、この「ガレリアかめおか」ですが、これほど立派な大きな建物には、何か大きな意味が込められているのではないかと思うのですが。

谷口 先ほど申し上げたように、この施設の中心は心学講舎であります。今の社会は高齢化がどんどん進み、社会的弱者といわれる人々が多くなっています。また、少子化が深刻な問題となっています。そこで青少年教育の必要性も思い、改めて人の人たる道ということを考え、生涯学習の拠点施設にしたいと思いました。また、国内だけでなく、世界各国に情報発信のできる施設にしたいとも考えました。こうしたことを視野に入れつつも、原点は梅岩先生の教えであります。私たちのふるさとから素晴らしい人が出生した、ということに感謝したいと思います。

黒川 三十分という限られた短い時間の中で、ご参加いただいた方々には発言時間が少なく申し訳ありませんでしたが、ここに安置されております梅岩先生の木像が、今のお話をどんな思いで聞かれただろうかと思います。

これから、二十一世紀という新しい時代がやってきます。IT革命とか情報社会とか、今後の社会はさまざまな情報の中から、価値ある情報を収集確保し、いかに活用するかが大きなポイントです。地元・亀岡から“梅岩先生の教え”を発信することがいかに大切かを認識していただくとともに、このご縁をさらに深いものにし、このフォーラムが多少なりとも梅岩先生への理解への助けになればと思います。

どうもありがとうございました。

(記・松田有加)

 

 

 

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