第2部 発言記録
1. はじめに
伊藤憲一(進行司会者) まだお食事中だろうと思うのでございますが、6時半になりましたので、私、司会の立場から一言ごあいさつだけ始めさせていただきたいと思います。
本日は、皆様いずれも大変お忙しいお立場の方々であるにもかかわらず、このささやかな知的対話の試みにご参加いただきましたこと、まず御礼申し上げたいと思います。主催者というか、司会者として、一体何をどういうつもりでやっているのかということだけ、最初に一言ご説明させていただきたいと思います。と申しますのも、本日のこの会合が本年の「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」というテーマの1年間にわたる知的なエクササイズのスタートだからでございます。
実は、「海洋国家日本の構想:世界秩序と地域秩序」というテーマで行いますこの「自由討論」であるとか、「円卓討論」であるとかというこれから1年間の営みは、4年間にわたる、より大きなプログラムの第3年目ということでございまして、全体から見ると4分の1の比重を占めている営みでございます。
私、本日ここに持ってきたんですが、第1期は一昨年の1998年度でございまして、やはりこのような「自由討論会合」を4回やりまして、最後にパブリックな討論会として「円卓報告討論会」というのをやりまして、その成果は皆様のお手元にお届けいたしましたが、こういう『日本のアイデンティティ』という本にまとめたわけでございます。
同様のエクササイズを昨年の1999年度は「21世紀日本の大戦略:島国から海洋国家へ」というテーマで行いまして、同名のこういう本にやはりなっているわけでございます。本年も同じような本を出す予定でございます。このような「自由討論会合」は4回やりますが、この討論の模様は速記をとらせていただき、いずれこの本の3冊目として『海洋国家日本の構想』というテーマで出版いたしたいと考えております。
ところで、一体どういう問題意識で、何のためにそういう議論をやっているのかということにつきまして、冒頭に主催者として一言だけ簡単にご説明しておいたほうがよいかなと思いますので、ご説明をさせていただきます。このタイミングで、つまりちょうど世紀をまたいで、冷戦が終わり、やれグローバリゼーションであるとか、やれIT革命であるとかという激動の中で21世紀を迎えるという世界の変化を背景として、一体日本丸という船はこの荒波の中をしっかりとした足取りで進んでいるのだろうかという目で振り返ってみますと、まことに心もとない、とてもこの先の荒海を乗り切っていけそうにない千鳥足ぶりのように見えるわけでございます。