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一方、作る側の論理からいえば、部品調達から製品の納入まで6ヶ月かかるというような状況にあるわけでございます。すなわち、作り手側では、この6ヶ月という期間をひとつの基準にして物事を判断するのに対して、クライアント側(お客様側)では2週間前にしか調達数量を確約してくれない、ということになります。そうしますと、通常はまさに力関係になるわけでございますが、販売店側が強い場合には、ある程度生産者側のリスクによって、見込みで生産をしておくということが通常のやり方ではないかと思います。そうしますと、このデッドストックの巨大なリスクといったものを生産者側がかぶらなければいけない、ということでございまして、ここでいろいろなトラブルがおきてしまうことになります。その処理の仕方いかんによっては、判断のミスによりまして、数十億円ベースの損失もいとも簡単に生じてしまう、というのが現状でございます。すなわち、この会社の場合には最適化というのはわかるけれども、何をもって最適化とするのか、あるいはリスクを誰がかぶるのかといったところが、非常に難しいことを指摘されておりました。

次はB社の場合です(図9)。これはあるアメリカの販社の例ですが、ここでは先端的なPOS情報を導入しまして、タイムリーにお客様の購買動向を把握している、そういった販売店でございます。ここではPOS情報をもとに、ある商品の販売ピークが過ぎたといったことが明らかになったわけでございます。当然、販社はそれをタイムリーに判断しまして、不良在庫が積みあがる前に、とにかくこの製品について抑えようと動くわけです。一方、アメリカの場合にはご案内のとおり、生産工程をどんどん海外に出しておりますので、今では多くの企業がメイドインチャイナなり、あるいはその他のアジア諸国で生産をしてアメリカに輸入するといったことが、一般的な仕組みになっております。注文を受けた中国側の工場では年間計画に従って生産を続けていることが多く、もちろん、ひとくちに中国といいましても、工場によって差異はありますが、要は計画経済から出発したご当地では、その年度のスタートにあたって、今年これをいくら作るというような形で、年間計画で生産に必要な調達をアサイン(割り当てる)するというところが、まだまだあります。そういった場合には、契約によって一年間作りつづけるというようなことも、過去には当然あったわけでございます。そうしますと、このケースでは日本の会社が仲介していたのですけれども、現場サイド、生産サイドからは約束した売上は何とか達成しろという形で檄が飛ぶ。売れないのは営業の努力が足りないからだというような檄が飛ぶわけです。一方、先ほど申しましたように需要側に最も近いところでは、すでにピーク、オフピークというのを判断しているわけでございますから、ここでも非常に大きな問題が生じてしまう。これはいったい誰が悪いんだ、というような話になってくる。責任の押し付け合いが生じているということでございます。

今の2つの例に限らず、一般に言われるのが部分最適と全体最適ということであります(図10)。特にここで強調させていただきたいのは、部分最適の積み上げが必ずしも全体最適にはならないということでございます。ここでは代表的な部分最適の例としまして、メーカー、卸、小売と3つの部分に分けて図をまとめてみました。

 

 

 

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