V 外国船舶の監督
1. ポートステートコントロール(PSC)の概要
海上における人命の安全や海洋環境の保全を図るため、国際航海に従事する船舶は、安全面等の設備や船員の資格等満たさなくてはいけない基準が国際条約(SOLAS、MARPOL、STCW条約等)に定められており、その基準をクリアーしているかどうかのチェックが旗国において義務付けられています。(旗国主義)
しかし、近年の便宜置籍船舶や老齢船舶の増加により、この最低基準を満たしていない船舶(サブ・スタンダード船舶)が増えてきたため、外国船舶が入港する寄港国においての安全性等のチェックの必要性が国際的にも高まってきましたが、国際法上、外国籍の船舶や航空機はその旗国の領土と見なされた治外法権であり、一律に寄港国の法律を適用することは出来ませんでした。
そのため、1981年に国際海事機関(IMO)において「PSCについての監督手続き」が採択され、PSCは条約上寄港国の権限として認められ、世界的に実施されるようになりました。(寄港国主義)
我が国もこれを受けて、1983年から外国船舶に対するPSCを実施しています。
2. PSCにおける地域協力体制
広域な地域内でのPSCの効果的な実施や各種条約の普及を促進するため、1982年パリにおいて開催された欧州14カ国の担当閣僚会議において、PSCに関する覚書及び宣言文(パリMOU)が採択され、地域内で強力なPSCを実施し、成果を納めました。
それを受けて、1993年、アジア太平洋地域でも同様の「アジア・パシフィック地域におけるPSCの地域協力に関する合意(東京MOU)」が採択され、翌年より活動を開始しています。
現在の東京MOUのメンバーは、日本・オーストラリア・カナダ・中国・香港・韓国・マレーシア・ニュージーランド・パプアニューギニア・シンガポール・バヌアツ・ロシア・インドネシア・タイ・フィジー・フィリピン・ベトナムの17カ国・機関であり、それに加え、ソロモン諸島・ブルネイ・米国沿岸警備隊・ILO・IMO・パリMOU・インド洋MOUがオブザーバーとして参加しています。
また、世界各地でも同様なMOUが、ラテンアメリカ・カリブ海・地中海・インド洋・西部及び中央アフリカ・ペルシャ湾・黒海の各地で設立や設立準備が行われています。
3. 新たなPSCの動き
近年の海難事故原因が、「人的要因」によるものが増加してきたため、機器類の操作に熟練しているかどうかの「操作要件」(OR)に関する監督の強化がPSCにおいても求められるようになり、1993年のIMO総会においてORに係わるPSCが導入され、我が国においても1997年よりORに関する監督も含めた一体的なPSCを実施しています。