次に、九州の基幹産業のひとつである造船業についてみますと、大手・中手造船所は近年、外航船の代替期にあたったことから比較的豊富な手持ち工事量を確保しているものの、韓国等諸外国との受注競争により、船価が依然として低迷しており、収益を高めるに至っていません。2000年代の造船業は、外航船の建造需要の減少や中国等の諸外国の設備拡張等により、これまで以上に厳しい国際競争に突入すると見込まれています。このため、我が国の大手造船所間では、国際競争力の強化を目指して、包括的事業提携や業界再編に向けた具体的動きが出てきており、運輸省としても、必要に応じ適切な措置を講じていくこととしています。
また、中小造船所は、内航船の建造需要の激減等から深刻な不況に陥っており、厳しい経営環境が続いております。運輸省では、このような状況に対処するため、中小造船業対策として、中小企業近代化促進法に基づく構造改善事業を5次にわたって実施してきましたが、当該事業が本年3月で終了することから、新たに、中小企業経営革新支援法による経営基盤強化の支援の実施を予定しております。
九州運輸局といたしましても、管内で実施される造船業・舶用工業の各種講習会等を通じて中小造船業・舶用工業の活性化等に向けて積極的に取り組んでいく所存であります。
さらにまた、プレジャーボートに代表される海洋レジャーの健全な振興発展に向け、九州・山口各地の水域管理者や関係団体などから構成する舟艇利用対策連絡会議を通じて、各種施策の実施に当たっての協調体制の構築、整備等を図って参ります。
船舶の安全・環境対策につきましては、従来からの検査業務に加え、内航海運事業者からの要望に応えて昨年創設された任意ISMコード(国際安全管理規則)により、内航船を対象として運航管理、船員の管理、保守・整備等の総合的な安全管理の適合審査業務を本格的に実施して参ります。
次に、海上労働につきましては、近年、船員を取り巻く環境は、長引く国内景気の低迷の影響に加え、外航海運におきましては国際競争の激化によって日本籍船と日本人船員が減少しており、また、内航海運におきましても内航輸送の合理化の進展等による内航船舶数の減少、さらに、漁業におきましては資源の枯渇や国際的な漁業規制の強化による減船等が相次いでおります。
特に、管内におきましては、平成10年の遠洋まぐろ延縄漁業の大規模な減船に続き、昨年も以西底曳網漁業の減船により100名の離職者が発生しており、また、全国と比較し地域経済に大きなウエイトを占めている内航海運をはじめとした九州の海運におきましても、荷動きが依然低調であること等から、極めて厳しい経営環境となっております。
こうした状況を背景に、管内における昨年上半期の有効求人倍率は、0.15倍と一昨年と同様に低水準て推移しており、依然として厳しい雇用情勢が続いております。
また、こうした厳しい雇用情勢の一方で、船員の高齢化は依然として進んでおり、近い将来若年船員が不足することが懸念されております。
このような状況を踏まえ、将来にわたり海運における安定的な輸送を確保するため、外航海運につきましては国際船舶制度の拡充を図るとともに「若年船員養成プロジェクト」等若年船員に対する訓練教育の実施・充実する等日本人船員の確保・教育を推進してまいります。また、管内におきましては、内航海運業界が中心となって設置している「九州地区船員確保対策連絡協議会」におきまして若年船員確保対策の一環として実施しているリクルート活動をはじめとする諸活動を積極的に支援、協力して参る所存であります。
さらに離職船員対策としましては、職業転換等給付金の支給等所要の救済措置を講じるとともに、各種技能訓練や海技資格取得講習の受講促進を通じ、再就職の促進を図ります。
一方、労働条件・労働環境の改善につきましては、一昨年4月から週平均40時間労働制が本格施行されたところであり、同制度の定着を目指し、鋭意指導・監督を強化します。また、災害のない職場の実現を目標に、第7次船員災害防止基本計画に沿って定められた具体的な災害防止実施計画により所要の措置を講ずるとともに、船員労務官による監査及び各種講習会等を通じて安全衛生思想の普及と意識の高揚に努めて参ります。
このほか、近年の海洋レジャーの多様化に伴い、一昨年、五級小型船舶操縦士を新設しましたが、今後とも当該資格制度の定着に向けてPRを図って参ります。また、多発するプレジャーボート等の海難事故が一層大きな社会問題となってきていることから、各種養成施設や更新講習機関等を通じて運航技術やマナーの向上を図り、海難事故防止に努めるよう指導を強化します。