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さて、最近、経済企画庁が日本の景気の谷は昨年4月ごろだったと発表したという新聞記事を見ました。九州の経済も設備投資もわずかながら増加するということで、一部に回復の動きもあるようでありますが、一方で住宅投資などは一時の反動かもしれませんが減少に向かっているとか、また、個人消費も全体としてはなかなか回復感に乏しいという状況かと思います。

そういった中で九州の運輸情勢を見ましても、特に景気の動向を非常に反映する貨物輸送については、確かに昨年の秋口以降、量も景気に敏感であるといわれておりますトラック輸送がやや持ち直してきており、また、アジア経済が回復に向かっておりますので、アジア向けの輸出を中心に国際貨物の動きも全体として持ち直してきております。

また、旅客輸送につきましても、国際航空は好調な状況ですし、JR九州さんがやっておられますビートルを中心に外航の旅客船も大変好調であります。

一方、国内の旅客事業ということになりますと、なかなか、少子化とか旅行の安・近・短化もあり全体として減少傾向であります。飛行機は伸びていますが、これは鉄道等との価格面を中心とした競争での伸びているのではないかと思います。

こういったときはよく景気について不透明感が強いという言葉が使われますが、実際に経営に当たっておられまして、また、九州経済の要職におられるお立場から、九州の経済の現状、その中でも運輸、観光といったものについて、ご感想をお伺いしたいと思います。

 

石井会長

今、局長が概観されたとおりだと思います。専門家の見方も、日本の経済は、底を打って緩やかな回復とか、改善の兆しの途上ということであります。

ただ、私はまだまだ安心はできないだろうと思っています。確かに、九州においては、IT関連とかIC関係の産業が少し活況を呈して、いわゆる製造業主導型で景気が改善されています。それに、新幹線関係や、今年は特にサミット関連などで、公共投資がちょっと下支えをしている感があります。

それに、確かに昨年度は0.5%ですが、3年ぶりにプラス成長をしたという記事がありました。しかし、個人消費は依然として厳しいですし、雇用情勢も、あまりいい数字に改善されていません。大事なのはこれからどうなるかであると思っています。

また、最近、世の中全体がどちらかというと成熟社会型になってきまして、あまり流行とかそういうものでお金を使わない、使い方が非常に堅実になってきたといえます。これは、今後とも変わらないと思います。

ただ、逆にいいますと、良いものは高くても積極的に買うということだと思います。ですから、消費動向を変えるためには、本当に皆が求めているものに、カルチャーとか、そういうことも含めて対応していく必要があるのかなと感じています。

それで、将来の展望ですけど、これからの九州は、やはりアジア志向ということが非常に大きな戦略になってくると思います。その中で観光については、ショッピングなども含め、もっと幅の広い捉え方で対応することが非常に大切だと思います。

また、製造業分野でいえば、やはりIT関連ですね。これは世界との競争になりますけれど、どういうふうに応用化、ソフト化していくかが重要です。

それから、ベンチャーやニュービジネスですね。ベンチャー企業の育成というのは、非常に大きなこれからの課題でしょう。それに新たな発想さえあれば、何も先端産業だけじゃなく、ローテクだって、あるいは介護、福祉だってビジネスチャンスはありますよ。

それに九州における一次産業なんかは、三次産業的な勉強を大いにしないといけないと思っています。九州のものが、本州のブランドで売られているというのは、はなはだ残念ですから。

まあこの辺がこれからの九州経済の発展のカギを握る大事なポイントだと思っています。

 

中西局長

どうもありがとうございました。

さて、九州の物流の効率化という問題についてであります。

九州では、7県全ての県庁所在地が高速道路網ですでに結ばれておりますし、東九州自動車道等の整備も進んでいるわけですが、やはり東京、大阪から遠いという地理的条件、それから独立した島であるという面からモーダルシフトの必要性というのが非常に言われているわけであります。

 

 

 

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