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2] 物流子会社系求貨・求車情報システム

物流子会社の場合、自社ではトラックをほとんど所有せず、親会社であるメーカー等から依頼に基づき、実運送を行うトラック事業者の手配を行う業務を行う場合が多いことから、その手配システムを活用した求貨・求車情報システムを事業化している。

このため、トラック事業者系システムが貨物の確保に主眼を置いているのに対し、物流子会社系の場合、いかに効率的に車両を手配するか、という点に重点が置かれる。以下に掲げた事例の場合、複数の事業者が"買い"注文を入れると、その運賃の金額によってオークション式に落札者を決定する方法を取ることにより、輸送コストの削減が促進される。

 

【物流子会社系求貨・求車情報システムの事例】

(前略)東京都調布市にあるキユーピー流通システム本社の片隅では、3台のパソコンを前にして社員たちが次々と各社の物流契約を成立させている。この小さなスペースが、同社自慢の"求車・求貨取引所"だ。パソコンの画面上にずらりと並ぶのは様々な会社が出す「求貨情報」や「求車情報」だ。その項目は「積地」や「降地」、「商品」「物量」、「車種」「空車日」など。いわば、運送会社や荷主企業から出される空車や積み荷のインターネットを介した"売り情報"だ。刻々と追加される新たな情報の先頭には、すぐさま「仮」の字が点灯する。それがその案件に"買い"が入った印となる。買いを入れた数社のうち、最も良い値をつけた会社が同案件を落札する。その売りと買いのマッチングをリアルタイムで手掛けるのが、「QTIS(キユーピー・トランスポート・インフォメーション・システム)」の役割だ。

現在、QTISの会員企業は地方の中小運送会社から大企業の物流子会社まで約150社。会員各社は事業所や営業所からパスワードを使ってQTISのホームページにアクセスし、空車情報を流したり、積み荷の情報に買いを入れる。

荷主企業は様々だ。キユーピー流通システムや会員企業の顧客企業、緊急にトラックを必要としている一般の荷主など、基本的にはだれでも参加できるオープンマーケットの状態だ。売り買いの契約が成立すると、運賃の中から一定の仲介手数料がキユーピー流通システムに支払われる。

QTISの市場で取引される商談は、遠距離輸送の帰りの荷を探すトラックや緊急に必要になった輸送のトラック探しなど。「突然降ってわいたような仕事」がほとんどだ。「固定的な仕事は減らさずに、変動的な仕事だけを時に応じて上乗せできる」と、遠藤社長。しかも、需要と供給をリアルタイムでマッチングした値付けだけに、売り手・買い手双方に合理的な価格が形成されるのもメリットだ。年間のスケジュールだけではなく、月初と月末でも価格は変わり、「プラスマイナス10%はいつも相場が変動している」(遠藤社長)。

QTISを立ち上げたのは97年。同社が組織する中小運送会社の親睦会「キューソー会」全体の底上げを図ろうとしたのが始まりだ。今では東芝の物流子会社など外部の運送会社にまで会員は広がった。「不景気でトラックが過剰気味なのが、マーケット立ち上げの追い風」(遠藤社長)となり、今では一日平均600件、月8,000件の売り買い情報が飛び交うマーケットへと成長している。

キユーピー流通システムは自社ではトラックを1台も持たない。しかし、新市場を形成して運営母体となることで、従来とはまったく異なる"物流会社"として不況下に業績を伸ばした業界の優等生だ。

(資料)日経産業新聞(1999年9月30日)

 

 

 

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