第5章 奄美大島おける総合交通ネットワーク整備の基本方向
第1節 奄美大島の交通体系の現状と課題
奄美大島における交通体系の現状と課題については、前年度の報告書で次のように整理している。
1. 海上交通
【現状】
1] 航路については、東京、神戸、鹿児島からの便が就航しており、主に名瀬港に寄港する便が多いが、瀬戸内町の古仁屋漁港へ寄港する便もある。
これらの長距離フェリーの利用者は、昭和50年で約20万人であったが、昭和63年のジェット機の就航もあり、減少を続け、平成10年では約12万人となっているが、生活必需物資の輸送や住民の日常生活の移動手段として重要な役割を担っている。
また、アンケートにおいては、大島北部や名瀬市周辺に観光スポットが点在していることなどから、名瀬港を発着する航路の利用者では「観光・レジャー」での利用も多い。なお、「観光・レジャー」目的での利用者の観光予定地は、「あやまる岬」などの北部地域のスポットが主流であるが、「加計呂麻島」をあげる利用者も多い。
2] 港湾については、本土及び群島内各島を結ぶ定期船の寄港港として、また、物流の拠点港や水産業の基地港として整備が進められ、5千トン級の定期船の接岸が可能となっているが、アンケートでは、「駐車設備が少ない」など港湾施設の整備充実を望む意見も多い。
【課題】
1] 定期旅客航路は、離島住民の生活及び産業活動において、不可欠な交通手段であることから、今後とも航路の維持改善を努める必要がある。
2] 定期船の寄港港湾については、施設等の整備を引き続き計画的に推進し、港湾機能の向上を図るとともに、その他の港湾等についても各地域の実情に応じた整備を進める必要がある。
2. 航空交通
【現状】
大島本島の隔絶性の高い地理的条件から、航空航路への依存度は高く、住民の生活及び産業活動にとって重要な交通手段となっている。このため、奄美空港のジェット化、奄美空港を中心とした群島内の小型機による航空ネットワークの整備が図られてきている。
現在、東京、大阪、鹿児島から直行便が就航しており、他の路線の利用者と合わせて、奄美空港の乗降客数は平成10年で約65万人に達している。
アンケートによると、利用者の目的は半数近くが「商用・仕事」で、「観光・レジャー」が3割弱となっている。「観光・レジャー」が目的の利用者の観光予定地は、大島北部のスポット中心となるが、「加計呂麻島」や「古仁屋」など南部地域への観光予定地も1割程度ある。
【課題】
今後とも、空港諸施設の充実や空港機能の強化を進めるとともに、航空路線については、旅客需要に応じた輸送力の増強、輸送サービスの改善に努め、引き続き安定的な運航の確保に努める必要がある。