また、これ以外の連携の形態として、複数の旅客船事業者が乗り入れる旅客船ターミナル等において、各事業者が共同で高齢者・身障者等の移動を支援するための係員を配置することも想定される。
3] 評価指標等を用いたバリアフリー化の進捗管理
本調査では、長崎県の海上旅客輸送におけるバリアフリー化の状況をアンケート調査等により把握・整理したが、最新情報を利用者等に提供するとともに、旅客船事業者等の取り組みのインセンティブ(動機付け)とするため、2]で述べた「海上旅客輸送バリアフリー化促進協議会(仮称)」もしくは地方自治体等の関係主体においては、今後も継続的にバリアフリー化の状況を収集・公表していくことが望ましい。
その際、旅客船事業者等の取り組みを一層促進するため、何らかの評価指標を用いて点数化したり、ランクづけすることが想定される。鉄道駅については、「バリアフリー度評価基準作成のための調査研究事業報告書」(交通エコロジー・モビリティ財団、2000年2月)において、「公共交通ターミナルのやさしさ指標」が策定されているが、旅客船ターミナルや船舶を対象とした指標について、こうした全国レベルでの指標策定を待つか、場合によっては長崎県独自の指標を策定し、各船舶・港湾の評価を行っていくことが有効と考えられる。
4] バリアフリー化に関する情報提供と意識啓発
3]に関連して、長崎県の海上旅客輸送におけるバリアフリー化の状況に関する情報を利用者が必要に応じて入手できるようにするとともに、高齢者・身障者等によるバリアフリー化された航路の利用を促進するため、各関係主体においては、各船舶、港湾等のバリアフリー化の状況を冊子、ホームページ等の媒体を通じて高齢者・身障者をはじめとする利用者に提供していく必要がある。
また、同時に、バリアフリー化の重要性や高齢者・身障者等への支援(介助)のあり方に関する一般市民への意識啓発を行っていく必要がある。
5] 法制度の整備と技術開発の促進
船舶のバリアフリー化にあたっては、船舶の安全性確保のための法規制とバリアフリー化に対応した構造・設備が相容れない場合があること、バリアフリー化への対応に伴って、実質的な同型船であっても換算トン数の増加により建造費をはじめとする各種コストが割高となることなど、法制度に関係する課題が存在する。これに関して、国においては、必要に応じて適切な見直しが求められるとともに、長崎県の海上旅客輸送に関係する各主体においては、長崎県の特性を踏まえ、望ましい法制度のあり方について、さまざまな機会を通じて国への意見・要望をあげていく必要がある。