7] ソフト面での対応の充実
海上旅客輸送のバリアフリー化を進めるにあたっては、ハード面とソフト面の対応を併せて行うことにより、初めてその成果が十分に発揮されることから、ソフト面での対応の充実はハード面と同様に重要である。
特に、既存の施設・船舶等において、ハード面での対応が不十分な場合(未対応の場合および新設時に対応すべき場合)や、ハード面の対応が行われた後でも安全性の確保が特に重要となる乗下船時(特にボーディングブリッジのない港湾)においては、船員・地上係員等による人的な対応により、ハード面を補完する必要がある。また、船内で体調が悪くなったとき、ターミナルで切符の買い方や乗船口がわからないときなど、何か困ったことが生じたときにも、船員・地上係員等による人的な対応が必要となる。
ソフト面の対応においては、旅客船事業者の職員(船員・地上係員)による対応が中心となるが、状況に応じてボランティアや一般の乗客による支援も検討する必要がある。
<ソフト面での対応方策例>
・職員への研修によるバリアフリー化に関する意識啓発・知識伝達
・職員の対応マニュアルの整備とその運用
・バリアフリー化未対応箇所や乗下船時等における職員の介助体制の整備
・高齢者・身障者等の優先乗船の実施
・大規模ターミナルや観光航路等における案内・介助ボランティアの配置
・一般市民の意識啓発(特に小規模な港湾・船舶等における介助の代行)
(2) 具体的な対応の方向性
ここでは、「(1)基本的な考え方」を踏まえ、これまでの検討結果に基づき、バリアフリー化に向けて取り組むべきさまざまな項目を、1)新船導入、ターミナル新設・大改良時に対応すべきもの、2)既存の船舶・ターミナルの改造によって対応すべきもの、3)主にソフト面での対応によって対応すべきもの、の3つに分類し、具体的な対応の方向性を検討した。(表6-2-1参照)
1] ターミナル内のバリアフリー化
旅客船ターミナルのバリアフリー化については、ほとんどの項目が既存施設の改造で対応可能と考えられる。特に、出入口の段差解消・自動ドア化といった改良については、すでに実施されているターミナルの事例もみられ、必要性が高く、かつ比較的改造が容易なものと言える。また、車いす対応トイレについても、必要性が高くかつ既存施設において対応可能なものと言える。ただし、スペースの関係上設置不可能な場合、段差解消・腰掛式便座および手すりの設置といった対応だけでも実施することが望ましい。
このほか、既存施設において対応すべきものとして、現状はほとんど未対応であるがハード面の大規模な改造が不要な各種情報提供設備の設置があげられる。